『田鎖ブラザーズ』はなぜ唯一無二のサスペンスに? “定番”を覆す3つの見え方

真と稔が持つ「3つの見え方」がもたらす複雑さ

真は刑事として、犯人を見つけ出して捕まえることで事件を解明していく立場であり、一つの事件を加害者の方向から見つめることになる。一方で稔は検視官。遺体を通して「なぜこの人は死に至らしめられたのか」を解明していく、事件を被害者の方向から見つめる立場である。
そもそも彼らは、「被害者遺族」というもう一つの立場も有している。真か稔か、どちらか1人をとってもそこには2つの見え方があり、2人がそろえば3つになる。それらのせめぎ合いが、一つの事件に複雑さを与えることになるのだ。
第1話から第2話にかけて描かれたのは、ある父親の復讐劇だった。不幸な事故で加害者になってしまった人物と思われていた野上(近藤公園)は、実は自殺した息子を死に追いやった水泳部のコーチを事故に見せかけて殺害した、計画的な犯行であった。そして逃亡を続けながら、今度は水泳部の顧問だった人物をターゲットにする。いち早くそれに気が付いた真は、これから凶行に及ぼうとする野上に近付くのだが、あえて制止することはせず「やるならどうぞ。ここで止めても、どうせいつかやるでしょ。これで終わらせてください」と告げるのみ。

まさしくこれは、真が刑事として野上が事件を起こす目的を知ったうえで、同じ被害者遺族として復讐を遂げたいと願う心情を理解していたからに他ならない。その両方の立場から野上を見つめる真には、もう一つ「生きている大切な家族がいる」という立場が浮かび上がることになる。だから野上に、もう1人の息子の存在を思い出させれば、踏みとどまることがわかっていたのだ。復讐を果たしても何も戻ってはこないし、そしてまた何かを失うことになる。
この一連の描写は、同じ新井順子プロデューサーによる『アンナチュラル』(TBS系)第5話で描かれた青年の復讐と対になるかたちをもって、同じように“復讐の無力さ”を描いていたのである。

真のなかに3つ目の見え方が生まれたことが明確に描写されたということは、自ずと稔も同じものを持ち合わせているということだろう。さっそく第2話のラストで、田鎖兄弟は長年犯人だと確信してきた男にたどり着く。それでもまだまだドラマは序盤だ。すでに複雑化している復讐劇は、さらにいくつもの視点を絡めながら、何らかのアンサーに向かって突き進んでいくのだろう。
■放送情報
金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:岡田将生、染谷将太、中条あやみ、宮近海斗、和田正人、飯尾和樹(ずん)、長江英和、山中崇、仙道敦子、井川遥、岸谷五朗
脚本:渡辺啓
音楽:富貴晴美
主題歌:森山直太朗「愛々」(ユニバーサル ミュージック)
演出:山本剛義、坂上卓哉、川口結
プロデュース:新井順子
撮影監督:宗賢次郎
編成:高柳健人、吉藤芽衣
製作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/TAGUSARI_bros/
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