『田鎖ブラザーズ』が問う“終わらない過去”との向き合い方 31年前の謎は深まるばかり

「野上の動機は復讐だ。真に野上を逮捕できるのか?」と、弟の稔(染谷将太)が兄の真(岡田将生)に問う。それは、ふたりが同じ怒りを抱えているからこそ生まれるものだ。もし両親の命を奪った犯人が、何もなかったかのように笑っていたら、兄弟は迷わず復讐する側になるのだろう。
金曜ドラマ『田鎖ブラザーズ』(TBS系)第2話で描かれたのは、「復讐は本当に終わりになり得るのか」という問いである。不慮のひき逃げ事故の加害者から一変して、殺人事件の容疑者となった野上昌也(近藤公園)の逃走劇。だが、その足取りは単なる逃亡とは思えない不可解さを帯びていた。やがてその行動は、新たな復讐へと向かっていることが明らかになっていく。
「事故」では片付けられない、悲しき連鎖

オリンピック選手を目指すほど有望な水泳選手だった長男・大樹(本多陽登)は、2年前にツグミ川で帰らぬ人として発見された。死因は溺水による窒息死。当日は悪天候により川が増水していたため、事故として処理されていたのだ。
しかし、大樹の死は「事故」では片付けられない連鎖の先にあった。元・牧村こと大河内淳(紘史郎)の行き過ぎた指導と、過度な練習量による肩の故障。そして、その指導は顧問の知念麻衣子の指示によるものだったことが判明する。
だが大河内は新たな身分を偽装し、知念は予備校の講師に転身。それぞれが過去を切り離すかのように新たな生活を送っていた。野上は言った。「なかったことみたいに生きてて許せなかった」と。忘れられること。それ自体が、もう一つの“死”なのかもしれない。

知念の結婚式を狙って復讐を完遂しようとする野上を、真は止めることができなかった。「やるならどうぞ。ここで止めても、どうせいつかやるでしょ」と野上の手を取り、“それ”を握らせた。弟の光樹(吉田奏佑)が、大樹のために作ったお守りの失敗作。それは、あのひき逃げ事故の車内でも揺れていたものだった。
「これで終わらせてください」
もしかしたら、真は知りたかったのだろう。復讐をすることで、この苦しみを「終わらせられる」のかどうかを。犯人を見つけ出して、逮捕して、それで何が終わるというのだろうか。命を奪われた大切な人は、もう二度と戻ってこない。たとえその犯人の命を自らの手で奪ったとしても、一体何が救われるのだろうか。

「大樹を忘れるなー!」。野上は知念を前にそう叫んだところで取り押さえられた。花嫁姿の知念の隣には彼女の両親がおり、その傍らには、これからの人生を彼女と共に歩もうという伴侶がいた。目の前には、そんな彼女の晴れの日を祝うために集まった人たちの姿も。きっと、彼らにとって知念はまた“大事な人”なのだ。その光景は、復讐が新たな悲しみの連鎖を生むだけだと突きつけていた。

不安や辛いことがあると、ツグミ川に流すようにしていたという兄弟。あの日、兄も不安を流そうとしていたのだろう。また前を向いて生きていくために……。兄は強かった。そんな息子を父は愛していた。それだけが真実として光樹のなかに残ったのは、ひとつの救いにも見えた。





















