『風、薫る』水野美紀演じる美津はなぜ魅力的? 『ばけばけ』北川景子とは対照的な“強さ”

『風、薫る』水野美紀の美津はなぜ魅力的?

 これを踏まえて、りんが奥田家を逃げ出してからの美津の行動に注目すると、美津は時代に即した女性観、結婚観に流されない強さを持っていることが分かる。奥田家から逃げ出したりんを優しく迎え入れて東京へ逃がし、りんの行方を探す亀吉に対してしらを切り通す。安(早坂美海)と共にりんの家に身を寄せて以降は、持ち前のコミュニケーション能力で、あっという間に近所住民と関係性を構築してしまった。

 大切に守られ、内にこもる姫ではなく、矢面に立ち、自分で道を切り開く姫なのだ。大切なものを守るために、誰かに守られる道を選ぶのではない。自分自身が強くなる。母として、娘を守るためなら時代の常識に流されずに抗う、真の強さを持った女性といえる。

 そんな強さを持つ美津だが、近寄りがたさはまったくない。むしろ親しみやすい雰囲気が漂うのは、水野が演じているからこそだろう。栃木訛りがなじむ、比較的ゆったりめなセリフ回しが特徴的で、家族で会話しているシーンは、どんなに厳しい局面でも和やかだ。筝の指南を始めると、やる気をみなぎらせる姿もチャーミングだった。

 水野は、若手の頃『踊る大捜査線』シリーズの柏木雪乃役に代表されるような、涼やかな顔立ちが生かされた清楚な役柄も多かった。年齢を重ねてからは、役柄の幅がどんどん広がり、さまざまなキャラクターを思い切り演じている。2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』での、女郎屋の女将としての厳しさと温かさを絶妙なバランスで成り立たせたいね役も、記憶に新しい。近年はコメディエンヌとしての才能も際立ち、『風、薫る』でも要所要所でユーモア要素を担う俳優だ。

 美津役は、水野がこれまで演じてきた役柄の、強さ、厳しさ、親しみやすさ、ユーモアを融合した役といえるかもしれない。

 現時点では、看病人に対する偏見から、りんがトレインドナースになることに反対している美津。美津が持つ偏見は、明治時代にトレインドナースが世間から向けられる視線とイコールだ。

 りんの選択とともに、美津の価値観がどのように変化していくかは、トレインドナースの扱いの変化と一致していくだろう。そして、明治の世を生きる母の変化を、水野がどう演じていくかも楽しみだ。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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