佐野晶哉、小林虎之介、藤原季節は“人生の伴侶”候補? 『風、薫る』の恋模様を考える

NHK連続テレビ小説『風、薫る』は早くも4週目に突入。炊き出しの場で再会したりん(見上愛)と直美(上坂樹里)は、捨松(多部未華子)の「トレインドナースになりませんか」という言葉に導かれて、明治の時代には確立されていなかった看護師という職業に進む道へと足を踏み入れていく。
人生の大きな分かれ目となるこの瞬間、2人には恋の風が吹いている。本作の脚本を務めるのは、火曜ドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』(2024年/TBS系)を手がけている吉澤智子だけに、彼女たちの目まぐるしい恋模様も見どころのひとつだろう。
現在、りんは娘の環(宮島るか)と母親の美津(水野美紀)、妹の安(早坂美海)と4人で暮らしている。一度は“奥様”となって奥田の家に嫁いだものの、酔うと横暴な態度を取る夫の亀吉(三浦貴大)や姑の貞(根岸季衣)の過保護ぶりや嫌味に耐えられず、火事の喧騒に紛れて逃げ出したりん。しばらく恋愛には縁がないと思われたが、卯三郎(坂東彌十郎)が経営する「瑞穂屋」で働き始めたりんが英語が話せずに困っていたとき、颯爽とのれんをかき分けて現れたのが島田健次郎(佐野晶哉)だった。

「俺は何者でもない」と自分のことを語りたがらない変わり者の“シマケン”は、まだまだ謎めいた存在だ。しかし、風に吹かれたようにふらっとりんの前に現れては意味深な言葉を仄めかし、ミステリアスな魅力を醸し出す。亀吉には意見しても一蹴されるだけだったが、島田はりんの言動を興味深そうに見つめながら、彼女に思いもよらないアドバイスを送る。孤独な夫婦生活を営んでいたりんにとって、新しい知見を授けてくれる島田との会話は、不思議と心地良いものになっているのではないだろうか。
そんな2人の関係を観るたびに思い出してしまうのが、りんの幼なじみである虎太郎(小林虎之介)の存在だ。虎太郎はりんと同じ村で生まれ育ちながらも、家柄や出自の違いを気にして、彼女と対等に接することができずにいる。りんもまた、母親がコレラに倒れたときに不安そうにしていた虎太郎の手を握らなかったことをのちに後悔していた。

お互いに好意を抱きながらも、家族を気遣って素直な気持ちを伝えられない2人の恋模様は、どうにもすれ違ってしまう場面が多い。川辺で虎太郎が「りんは俺の姫様だから」と彼女の手の甲に自身の手のひらを重ねるが、縁談が舞い込んでいたりんは彼の手をそっと戻して、未練を振り切るように奥田の家に嫁ぐ決心を固める。さらに、奥田の追っ手からりんを逃がす際、遠のいていく船に向かって大きく手を振り、何かを伝えようとする虎太郎の声を遮るように、りんは「ありがとう」と叫んだ。それぞれの境遇が見えない隔たりを作ってしまうなか、虎太郎がその壁を超えられるのかが、恋が成就するかどうかの分かれ道だろう。
一方の直美は鹿鳴館で給仕として働き始めたのも束の間、遅れてパーティにやってきたアメリカ帰りの海軍中尉・小日向栄介(藤原季節)と出会う。ほかの参加者とは雰囲気が異なり、驕ったところのない小日向とデートを重ねた直美は、彼からのお付き合いの申し出を受け入れる。結婚相手を探して鹿鳴館にやってきた直美にとっては願ってもないチャンスだった。

しかし、彼女は道を歩いているときに、小日向の“本当の顔”を目撃してしまう。彼は実は海軍中尉などではなく、鹿鳴館に忍び込むために直美に近づいた詐欺師だったのだ。小日向栄介という名前も偽名であり、本当の名前は寛太。何もかもが嘘だった彼の本性を目の当たりにした直美は落胆して激昂するが、寛太は平然とした表情を浮かべる。彼女が自身の身の上を偽っていることも見抜いていたように、すべては寛太の手のひらで起きたロマンスでしかなかった。ただ、別れ際に寛太は直美に対して、決して語る必要のなかった本名を明かしている。ここで退場するキャラクターとは思えないので、共通点も多い2人の関係性がこれから変化していく可能性も捨てきれない。
本作では、恋の始まりはいつも風の吹く音が聞こえるが、その風向きは急に変わることもあるだろう。2人の恋模様がどのように転じていくのかは、物語が起こす風の導き次第ともいえる。りんと直美が自分の人生を模索するなか、その手をとって伴走する人物は果たして現れるだろうか。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK





















