永作博美×松山ケンイチに流れる心地よい空気感 『時すでにおスシ!?』が描く大人の再出発

永作博美×松山ケンイチの空気感が心地よい

 そんな胡桃をみなとが行きつけのスナックに連れて行った先で、泉美が放ったのが冒頭で紹介した台詞だ。いつしか人間関係において「敵か味方か」「勝つか負けるか」という二極化した思考に陥っていた胡桃。だけど、たとえ意見が合わない相手だったとしても敵と決まったわけではない。サバイバルの時期を抜けた、自分よりも少し先輩のみなとたちの姿に触れて、胡桃もいい感じに肩の力が抜けたのだろう。拳を下ろして大江戸と対話した胡桃は、謝罪の上でアジの再テストを申し出た。

 一方で、過去のパワハラ騒動で大江戸に一切非がなかったかといえば、それもまた違う。自分の元を去った弟子から「昔気質なやり方ばっかり押し付けて、俺たちの意見なんて聞いてもくれない」と不満をぶつけられた大江戸。職人の世界はどうしても閉鎖的になりやすく、いつしか彼も伝統や慣習に囚われて、新しいものを受け入れない姿勢になっていたのかもしれない。

 どの業界も時代の変化と無縁ではいられず、日々移り変わっていく価値観や常識にも目を向けていく必要がある。それは、何も悪いことばかりではない。これまで現金派だった大江戸がスマホ決済を初めて使ってみた結果、いろんなメリットを知ったように。確かに機械的かもしれないが、スマホ決済でも店員に「ありがとう」と一言お礼を告げるだけで、大江戸が大切にしていた人の温もりは十分に感じられる。何を変えて、何を残していくべきなのか。反射的に変化を拒むのではなく、頭をちょっと柔軟にして考えていけたらいい。

 大江戸の変化に背中を押されて、オンラインギフトに挑戦してみたみなと。それで初めてプレゼントした相手は大江戸だった。「オンラインギフトは贈る実感ももらう実感もない」と思っていたみなとだが、それは大きな勘違い。画面に映るチョウチンアンコウのエコバッグを嬉しそうに眺める大江戸の表情と、その横顔を見つめるみなとの笑顔が何よりの証明だ。もはや講師と生徒という関係を超え、第2の人生で奮闘する同志のような関係になりつつある2人。その間に流れる空気感は温かくて心地よい。

 それはさておき、気になるのは息子・渚(中沢元紀)の様子。みなとに電話越しに語った「家族だって全部は分かり合えないんだから。新しい場所で、新しい人となんて、その百倍難しくて当たり前だよ」という言葉に、妙に実感がこもっていると思ったら、どうやら彼もまた新しい場所で人間関係に悩んでいるようだ。

■放送情報
火曜ドラマ『時すでにおスシ!?』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:永作博美、松山ケンイチ、ファーストサマーウイカ、中沢元紀、山時聡真、杏花、平井まさあき(男性ブランコ)、後藤淳平(ジャルジャル)、猫背椿、関根勤、有働由美子、佐野史郎
監督:坪井敏雄、岡本伸吾、金子文紀
脚本:兵藤るり
編成プロデュース:松本友香
プロデュース:益田千愛、鈴木早苗
主題歌:Creepy Nuts「Fright」(Sony Music Labels Inc.)
音楽:青木沙也果
製作著作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/tokisushi_tbs/
公式X(旧Twitter):@tokisushi_tbs
公式Instagram:tokisushi_tbs
公式TikTok:@tokisushi_tbs

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