『風、薫る』原田泰造が体現する“寄り添う”牧師像 小日向が怪しすぎる人物でつらい

捨松の誘いを断った直美は、鹿鳴館の入口で、小日向(藤原季節)が通行証をなくして立ち往生しているのを目にする。直美の機転で小日向は入館できたが、筆者の中で疑念が生じた。よもや小日向も身分を偽っているのでは? 上司の用事で入館証を忘れることは考えにくい。いつも詰襟の制服姿で、館内で他の来賓と歓談する姿も見られなかった。直美は、自分と同じような相手を見つけただけではないのか。

それまで思いつめた生き方をしてきた直美は、奥様になる“上がり”の目をつかんだことで、自身のアイデンティティを省みる余裕が生まれたのだろうか。捨松に指摘されたように、自分が誰かを助けられる人間であると知ったことも影響しているかもしれない。吉江(原田泰造)に対する、なぜ牧師になろうと思ったのかという質問は、自身の生き方をふり返る直美の心の動きと並行している。
街場の教会の牧師役で原田泰造が起用されると知り、どんなキャラクターになるか、筆者の中で最初はうまく像が結べなかった。今作を観ていると、みなしごの直美にとって、吉江は空気のように存在しながら、必要なときに手を差しのべる。本当の意味で「寄り添う」というのは、こういうことなのだろう。

牧師の吉江は、生きた言葉をくれる存在だ。原田は、『生理のおじさんとその娘』(NHK総合)でもそうだったように、役と対話し、自分自身と対話しながら、言葉を練り上げ、言葉を積み上げる。そうやって生まれるキャッチボールが、観ているこちらの内面で響いていると感じる。
りんを見張る男の影は気のせいではなかった。人生の決断を前に、少し強めの風が二人に吹きつける予感がある。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















