知識ゼロから“サブスク制”ミニシアターを設立 「シネマリス」支配人が語る異例の挑戦

「シネマリス」支配人が語る異例の挑戦

ベテラン副支配人と若きスタッフに支えられて

ーー運営面では、ギンレイホールにいらした方を副支配人に迎えられたそうですね。

稲田:はい。私一人では到底無理で、一緒に作ってくれたチームの人がいたからこそできました。他の映画館の方にお話を聞きに行く中で、ギンレイホールにいらした彼と知り合い、「一緒にどうですか」とお誘いしました。また、X(旧Twitter)で「ボランティアでもいいからやりたい」と言ってくれた若い子たちが何人も手伝ってくれて、開業してからはアルバイトとして入ってくれました。そういう若い人たちにも本当に支えられましたね。

ーーオープンして数カ月、手応えや今後の課題はどのように感じていますか?

稲田:レスリー・チャンの特集上映をやった際は、オールドファンだけでなく、中国や香港の若い方、日本人の若いファンも来てくれたのがすごく嬉しかったです。一方で、作品の選定やスケジュールの告知が遅れてしまってお叱りを受けることもあり……。サラリーマン時代とは違い、自分で公式サイトを更新したり手探りでやっている部分も多いので、そこはプロとしてもっとしっかり宣伝し、軌道に乗せていかなければいけないなと痛感しています。

ーー明治大学も近くにありますが、客層はいかがですか?

稲田:神保町シアターさんにご挨拶に伺ったとき、「明大生は全然映画を観に来ませんよ」と言われていたのですが、本当にその通りで(笑)。シニア層の方にはたくさん来ていただいているので、これからは学生さんや、仕事終わりの会社員の方々にももっと来てもらえるようにアプローチしていきたいです。

サブスク制度の導入と“居場所”としての映画館

ーー最近は配信で手軽に映画が観られる時代ですが、その中で映画館で映画を観ることの重要性についてはどうお考えですか。

稲田:やっぱり暗いところで没入できること、そして「知らない人と一緒に観る面白さ」があると思っています。同じところで笑いが起きたり、逆に「私は泣きそうなのに、なんであの人は笑ってるんだろう」と思ったり。パソコンやスマホの暗転した画面に自分の顔が映ることもないですし(笑)、2時間、3時間スマホを切って、不便なところで没入する体験をしてほしいです。また、うちのパートナーが言うには、「映画館は生活や勉強に疲れたときに逃げ込んで、リフレッシュしてまた戻るための“避難場所・居場所”だった」と。私もシネマリスをそういう逃げ場所・居場所にしたいという思いは最初から掲げています。

ーーシネマリスの大きな特徴として、定額見放題(サブスクリプション)の制度も導入されています。

稲田:これは副支配人が以前勤めていたギンレイホールの制度に影響を受けている部分もあります。導入したことで、「サブスク対象作品なら何でも観る」という常連のお客様ができつつあるのはとても嬉しいですね。ただ、宣伝が上手く届いていないのか、「サブスクに入らないと映画が観られないのでは?」と誤解されてしまうこともあって。もちろん会員でなくてもどなたでもご覧いただけますし、「まずは1本良い映画を観ていただいて、それをきっかけにサブスクに入ってほしい」というのが理想です。

ーーミニシアターでサブスクを導入した一番の狙いはどこにあるのでしょうか?

稲田:大きな理由は、「お客様が自分で選ばないような映画」と出会って、幅を広げてもらうきっかけを作りたいからです。今の時代、動画サイトだとおすすめ機能で自分の好きなジャンルや同じような作品ばかりが出てきてしまうじゃないですか。そうではなく、「1本観て、ついでにもう1本観てみたら案外面白かった」という体験を提供したくて、あのアルゴリズムにはないところを目指したいと思っています。あとは少し現実的な話になりますが、会費を固定収入とすることで、劇場を維持するための固定費を少しでも賄うという切実な側面もあります。

ーー小規模な独立系映画館だからこそできる作品選びについてはどうでしょうか? ドキュメンタリーなど、強いメッセージを持つ作品への風当たりが強いこともあります。

稲田:そういう声に屈しないでいきたいなと思います。スタッフのことを考えると悩むこともあるかもしれませんが、すべてが「右にならえ」になってしまうと良くない。小さくも存在する意味というのは、そういうものに抗って声を上げていくことの意義だと思っているので、そこは頑張りたいですね。とにかく1日でも長く潰れないように、進化する映画館として続けていきたいです。

■映画館概要
「CineMalice(シネマリス)」
シアター1
・座席数:67席(予定)
・スクリーンサイズ:2.3m×5.5m(予定)
・デジタル映写:NEC NC603L
・音響:7.1ch / Meyer Sound ULTRA-X40(メインスピーカー)
シアター2
・座席数:64席(予定)
・スクリーンサイズ:1.9m×4.5m(予定)
・デジタル映写:NEC NC603L
・音響:7.1ch / Electro-Voice TS940S(メインスピーカー)
開館予定日:2025年12月19日(金)(予定)
所在地:〒101-0052 東京都千代田区神田小川町三丁目14番3号 ilusa(イルサ)B1F
最寄駅:地下鉄「神保町駅」徒歩3分(東京メトロ半蔵門線・都営新宿線・都営三田線)、JR「御茶ノ水駅」徒歩6分(中央線・総武線)
運営会社:株式会社シネマリス
代表取締役・映画館支配人:稲田良子
公式サイト:https://cinemalice.theater/
公式X(旧Twitter):https://x.com/CineMalice2024
公式Instagram:https://www.instagram.com/cinemalice.mini.theater/
公式Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=61576243508975
公式note:https://note.com/cinemalice

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