『風、薫る』早坂美海の豊かな“喜怒哀楽” 『対岸の家事』『愛の、がっこう。』とのギャップ

『風、薫る』早坂美海の豊かな“喜怒哀楽”

 舶来品などを手広く扱う「瑞穂屋」を経営する卯三郎(坂東彌十郎)のもとで仕事に励むりん(見上愛)と、捨松(多部未華子)に直訴して鹿鳴館で給仕として働く覚悟を決めた直美(上坂樹里)。NHK連続テレビ小説『風、薫る』の第3週「春一番のきざし」では、これまで逆風の中を歩いていた2人に、人生の転機となる春風が吹いたような気がした。

 栃木の那須で暮らしていた美津(水野美紀)と妹の安(早坂美海)もりんを頼って上京してきたことで、ようやく家族4人での暮らしが本格的にスタートする。幼い娘・環(宮島るか)と2人で心細く暮らしていたりんにとっては朗報だろう。ご近所さんのマツ(丸山礼)との交流も含めて、一ノ瀬家の日常はいっそう賑やかになりそうだ。

 水野美紀演じる美津の気高くたくましい母親姿はもちろん、りんの2歳下の妹で喜怒哀楽が素直に溢れ出てしまう安を演じる早坂美海の芝居も注目だ。第1話からすごろくに一喜一憂したり、美津のいつもの小言に対して、薙刀の稽古中にりんと顔を見合わせたり。仲睦まじい姉妹の日常を表情豊かに演じていた早坂だが、りんが望まぬ縁談を持ちかけられた際は、姉の代わりに自分が嫁に行くと申し出る優しさを垣間見せる。夫を亡くしたばかりの美津や亀吉(三浦貴大)の家から逃げてきたりんを心配しつつも、家族の状況を冷静に俯瞰する安の思いを象徴するようなシーンだった。

 2025年以降は地上波連続ドラマへの出演も増加している。ドラマ『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(2025年/TBS系)では、主演の多部未華子演じる村上詩穂の学生時代を演じた。第5話の回想シーンでは、父親である岡田純也(緒形直人)との関係に不和が生じる娘の不安を芝居に反映させる。母親が亡くなったことでヤングケアラーとなり、高校の部活と家事の両立ができず、バスケ部も退部することになってしまった詩穂。毎日、学校終わりには買い物に行き、父親の分の料理も作る高校生活を余儀なくされる。それでも、卒業が近づくなか、父親の「お祝いに今夜は詩穂の好きなコロッケが良いかな」という言葉を耳にして、一瞬、ほのかな喜びを表情に滲ませる。しかし、自らが料理を振る舞うわけでもなく、「用意しといて」とひとこと言い残して去っていく父親の背中を見送る早坂の佇まいには、彼女の寂しさや心細さが漂っていた。

 さらに、木曜劇場『愛の、がっこう。』(2025年/フジテレビ系)では、年齢を偽ってホストクラブに出入りし、ラウール演じるホストのカヲルにのめり込んでいく女子高生の夏希を演じた。主人公の愛実(木村文乃)が教師を務める私立ピエタス女学院高等学校の生徒である夏希は、親のお金をホストクラブで使い込んでいたことが発覚。しかし、母親が担任の愛実や学校に助けを求めている間も、彼女はカヲルへの思いを抱き続けていた。

 本作の夏希役はオーディションで射止めたという早坂だが、憂いを帯びた表情や感情を振り乱す等身大の素顔は一際、印象に残っている。特に学校で見せる大人びた雰囲気と、カヲルといっしょにいるときの心底幸せそうな表情のギャップが陰影を作り、彼女の抑圧された環境や鬱屈とした感情を視聴者に伝えていた。今まで演じてきたキャラクターとは異なるイメージをまとった夏希役の演技は、早坂の演じることができる役柄の幅広さを示したはずだ。

 朝ドラでも引き続き、早坂演じる安のさまざまな表情が観られるだろう。一ノ瀬家のご近所づきあいや家族との交流が描かれるなかで、これから安がどのような道を歩んでいくのか。りんと直美の行く末とともに見届けていきたい。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる