坂東彌十郎はまるで『不思議の国のアリス』のウサギ 『風、薫る』が描く“社会と自由”の意味

『風、薫る』が描く“社会と自由”の意味

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第2週「灯の道」の週ラストとなる第10話に、清水卯三郎(坂東彌十郎)が初登場した。第1週のラストに初登場した大山捨松(多部未華子)と同じく、りん(見上愛)、そしてやがて直美(上坂樹里)にも大きな影響を与える人物だ。

 放送前に開かれた試写会見にて、脚本の吉澤智子が序盤で注目してほしい人物に挙げていたのも、実在した捨松と卯三郎だった。りんにとって卯三郎との出会いも、捨松に匹敵するほどの衝撃の連続だった。

 ステッキを手にし、蝶ネクタイ姿の紳士的な格好をした卯三郎は、手品でチョコレートを出してりんへと差し出す。「こんなおいしいもん、初めて食べた。魔法みたい」と目を丸くするりんに、これまでの経緯を知った卯三郎は「私が魔法で、外国へと連れて行って差し上げましょうか?」と“魔法使い”のようにステッキをくるりと回す。

 それにりんは「双六の目から外れた人も生きていけるように変えてください」と願いを告げる。これは本作のキャッチコピー「道を外れた人から、いつも道は生まれた。」を思い出させるセリフだ。りんの願いに卯三郎は「社会だ」と切り出し、「『ソサイエティ』を試行錯誤してなんとか日本語にした言葉だ」「女の双六の上がりが“奥様”だけではない。女も男も、強い人も弱い人もいて、社会だ」と伝える。

 りんと同様に、我々視聴者もこの言葉の本当の意味を理解するのは物語後半になってからなのかもしれない。しかし、会見の中で吉澤が話していたのは、「社会」や「自由」といった二文字の熟語は、英語の翻訳語として明治の時代に入ってきた言葉だということだ。卯三郎がりんに説く「社会」、そして「自由」という言葉も、2人が座っているベンチの後ろの建物に「日本自由新聞」として掲げられている。吉澤は「社会という概念をこのドラマでは丁寧に描いていきたい」「卯三郎は社会を面白がるような、そういう目線で出てくるイメージ」だと話していた。

 卯三郎から渡された名刺を頼りに、りんが娘の環(宮島るか)を連れて辿り着いたのは、舶来品を扱うお店「瑞穂屋」だった。舶来品と言えば、『ばけばけ』(2025年度後期)の山橋薬舗が思い浮かぶ朝ドラ視聴者も多いかもしれないが、それと大きく異なるのは、タキシードを着たウサギの置き物があることだ。名前にも“卯”がつく卯三郎は、りんを新たな世界へと導く『不思議の国のアリス』のウサギというわけだ。

 一方、直美はりんから預かった環に、幼き頃の自分の姿を重ねていた。子守歌を歌い「環ちゃんのおっかさんはもうすぐ帰ってくるよ」と話しかける直美。夜遅くに帰ってきたりんの頬を叩いたのは、環を思ってのことだ。

 しかし、直美の行動を“叱る”または“諭す”ものだと捉えれば、それは“間違える”りんを指摘し、正しい方向へ導くためのものだ。やがて“月と太陽”として互いを支え合いながら、バディとして新たな道を切り拓いていくための、その第一歩でもあるはずだ。

参照
https://realsound.jp/movie/2026/03/post-2327902.html

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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