マーティン・キャンベル×エヴァ・グリーン、『ダーティ・エンジェルズ』で見せた匠の技

マーティン・キャンベル、驚異の安定感! エヴァ・グリーン、抜群の存在感! 『ダーティ・エンジェルズ』(2026年)は、生粋の職人と女王がタッグを組んだ、驚異的に喉越しスルっとなアクション映画である。
2021年のアフガニスタン。ISISに拉致された少女たちを救うために、女性を中心に結成された部隊が救助へ向かう。身分を偽って潜入・調査を進めるが、次々と想定外の危機が部隊を襲って……。

シンプル・イズ・ベストなあらすじだが、ここから観客が想像するものを本作は全て押さえている。もちろん粗もある。予算の限界を感じるヘリが出てきたり、一瞬のプロットの混乱だったり。しかし、それでもアクション映画としての面白さは確かにあった。すべては監督を務めたマーティン・キャンベル、そして主演のエヴァ・グリーンのおかげだ。
マーティン・キャンベルといえば、1990年代から活躍するアクション職人である。御年82歳(!)で、『007/ゴールデンアイ』(1995年)や『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)、ジャッキーの新境地を開拓した『ザ・フォーリナー/復讐者』(2019年)も記憶に新しい。何かとネタにされがちな『グリーン・ランタン』(2011年)も監督しているが、それは彼の守備範囲の広さゆえでもある。超大作から中規模作品、スパイものからスーパーヒーローまで、基本的にアクション映画ならば何でも撮れてしまうのだ。

そして、エヴァ・グリーンである。キャンベルが監督を務めた『007/カジノ・ロワイヤル』でボンドガールを務め、以後も様々な映画で活躍してきた。そんな彼女の魅力を表現するなら、ダークで血みどろな世界観が似合うことだろう。『300 〈スリーハンドレッド〉 〜帝国の進撃〜』(2014年)などで絵に描いたような凶悪女王を演じ、ダークファンタジーの達人ティム・バートン映画でも常連を張り、次回作としてNetflixの大ヒットドラマ『ウェンズデー』への出演も決まっている。もちろん一般人を演じても上手いのだが、ダークで好戦的で役は彼女の得意ジャンルだ。
そんな2人が手を組んだので、多少の粗など些細なこと。2人はそれぞれの武器で勝負をしている。いきなり血みどろになっているエヴァグリさんで始まったかと思えば、お次は軍隊のトレーニング場で男性と総合ルールで戦うエヴァグリさん。しかもエヴァグリさんのフィニッシュムーブが痛烈な不意打ちという、何とも分かっている感のあるキャラ造形で掴みはバッチリだ。その後も銃に刃物にロケットランチャーに、いろいろな武器で大活躍。個人的には「こっそりナイフで殺す」みたいなシーンなのに、かなり思い切った殺し方をするサービス精神が嬉しかった。

そしていざ戦場に出ていくと、仲間たちと程よいギスギス感&丁々発止のやり取りを見せつつ、想定外の事態で計画が瓦解するのを流れるように描く。このへんのテンポ感はさすがのキャンベル。悪党側も観客の同情をメリメリ削る極悪行為の数々で、的確に観客のヘイトを溜めていく。もちろんアクションになれば、これまたキャンベルの手腕が冴える。銃撃戦・カークラッシュ・爆破、「誰が何をして何が起きているか?」が非常に分かりやすい親切設計。それでいて残虐描写も適度に散りばめられており、何もかもがちょうどいい。こういったバランス感覚は、職人キャンベルの本領発揮である。
もちろん主演と監督の技量は、ドラマ部分でもしっかり発揮されている。作戦中に死者が出たあと、その死体を埋葬するため、黙々と穴を掘るエヴァグリさんの無言の迫力、それを抑制のきいたかたちで撮るのも上手い。こういう定番のシーンをきっちり仕上げられるのも実力の高さゆえだろう。
104分のコンパクトな本編は、令和とは思えないほどアメリカンなエンディング曲で終わる。そのとき「マーティン・キャンベルとエヴァ・グリーンは、やっぱ凄いな」という感覚は残るはずだ。まさに匠の技である。
■公開情報
『ダーティ・エンジェルズ』
4月10日(金)より、新宿バルト9ほか全国公開
出演:エヴァ・グリーン、マリア・バカローヴァ、ルビー・ローズ
監督:マーティン・キャンベル
配給:クロックワークス
2024年/アメリカ・ブルガリア/104分/英語他/カラー/5.1ch/スコープサイズ/原題:Dirty Angels/字幕翻訳:平井かおり/R15
©2024 DIRTY ANGELS PRODUCTIONS, INC.
公式サイト:klockworx.com/movies/dirtyangels/






















