福地桃子が見つけた“アナログな繋がり”の温かさ  『ラジオスター』で届けたい“今の能登”

福地桃子が『ラジオスター』で届けたい思い

 3月30日よりNHK夜ドラ枠で放送されている『ラジオスター』。奥能登のとある町を舞台に、予算もスタジオもない中で小さな臨時災害放送局(災害FM)を立ち上げ、リスナーに“笑い”を届けようと奮闘する人々の姿を描くエンターテインメントドラマだ。

 本作で連続ドラマ初主演を飾るのが、大阪からボランティアでやってきて、ひょんなことからラジオパーソナリティーを務めることになる主人公・柊カナデ役の福地桃子。本作では“外からやってきた若者”という等身大の視点から、被災した町の人々の優しさと強さに触れ、葛藤しながらもマイクの前に立つ姿を体現している。

 すっかり“能登の人”になったという福地に、現地で感じた空気やアナログな繋がりの温かさ、そしてエンターテインメントが持つ力について、たっぷりと語ってもらった。

“今の能登”に触れて感じたもの

ーー福地さん自身とカナデがシンクロする作品だと思います。第1週を観ていても、芝居を超えたような瞬間を感じるときが多くありました。

福地桃子(以下、福地):嬉しいです。直前まで話し合いながら撮影を進めていくチームだったので、丁寧に撮影が進んでいきました。自由さのある撮影現場のなかで、そのときに感じた気持ちを大切にしながら参加させてもらえることが幸せでした。

ーーカナデは「部外者」として実際の被災の現状を目の当たりにします。カナデのリアルな反応があることで、まだ被災は続いているものなんだと再認識させられました。被災現場を見ているときのカナデの表情も印象的でしたが、福地さんが実際に能登に降り立って初めて見たときはどんな感覚でしたか?

福地:毎朝窓を開けて、起きたときの空気がすごく好きでした。だから撮影が早く終わった日も、海沿いを一人で歩いてどんなご飯屋さんがあるかなと外に出かけることが多かったです。でもやっぱり、美しいだけではない今の能登の状況に触れたときに、「この感覚って何なんだろう」と。映像を見ているときとはやはり違ったんです。能登の今の状況は知っている気はするけれど、どういう感情になったらいいのかも分からない。能登に行って、この作品に関わったからといって、何かを理解できたとも思えない。けれど、自分が今の能登から貰ったエネルギーを、誰かに違った形で届けることはできると思ったら、いくらでも方法があるなと思えました。カナデは外から来た人だからそういう感覚になったし、笑いにこだわる松本さん(甲本雅裕)に導かれて、自分がここに来た意味を見つけられたらいいなという思いになっていたんじゃないかと思います。

ーー撮影は2025年10月から2026年2月まで、4カ月間あったそうですね。キャストの皆さんもすっかり「能登の人」になっていたとか。

福地:はい。年末年始は『ラジオスター』一色でした。今回、私も含め初めて能登の文化に触れる人たちもいたのですが、撮影が終わるころには、たくさんの魅力を感じていました。例えば、渋川(清彦)さんが輪島塗に詳しくなっていたり。輪島滞在期間中にいろんなところを見に行ったり、輪島塗の情報を教えてくれたりして、だんだんみんなが能登の人になっていく感じがありました。「この町の魅力をたくさん感じたい」と自然に思うような場所でした。放送が始まってからもご縁が終わらずに続いていくような、不思議な感覚になる場所でした。

リアルな日常が息づく銭湯とふるさとを誇りに思う人々

ーー能登でのロケと大阪のスタジオでの撮影、その違いはいかがでしたか?

福地:(大阪では)銭湯に設置されたラジオブースでのシーンをメインに撮っていたのですが、そこの居心地の良さにすごく助けられました。お風呂を出た後にみんなが集う場所には、能登で見たことのあるものたちに囲まれていて。本物のものをお借りしてリアルな空気感を作ってくださっていたので、その空気が『ラジオスター』をすごく支えてくれていたんだなと振り返って感じています。

ーーだからこそ、銭湯の空間でも、訪れた人みんなが当たり前のように会話をしているのが素敵でした。都心部の銭湯などで気軽に話す機会はほとんどないように思います。

福地:あんなに皆さんが知り合いで気兼ねなく話すことができる場所があるのは羨ましいですよね。能登の銭湯でも実際に撮影をさせていただいたのですが、学校帰りの学生さんが宿題をしに来たりするんです。お風呂には入らなくても、みんなが集う場所で宿題をやっている。すごく淡々と毎日の日常を見れた感じがあって。落ち着くいい時間なんだろうなと思って、邪魔したくないという気持ちになりました。

ーー福地さんにとっても、能登はかけがえのない場所になりましたか?

福地:はい、なりました。自然の香りが近くにあるというところが一番魅力のひとつだと感じました。撮影でお世話になった皆さんと話していると、そこで育った人たちだから生まれてくる感性とか、「その土地が好きだ」という気持ちが伝わってきて、ふるさとを誇りに思っていることがカッコいいなと思いました。カナデが能登を好きになっていくように、私も本当に能登に支えられながら撮影できていたと思います。

ーー第1週で、松本さんが「なぜラジオなのか」と語るシーンがありました。いろんなものがデジタルになっていく中で、この思いには強く惹かれるものがありました。

福地:そうですね。第1週でラジオを始めるにあたって手配りでチラシを配ったり、能登の太鼓の文化を伝えていくシーンがあったりして、アナログの手触りの強みを改めて感じました。松本さんも言っているように、「今は便利だけど、これでは駄目なんだ。あえてここに来て集まってやることになにかあるんだぞ」という思いに、私自身も脚本を読んで動かされたものがありました。どうなってしまうかわからないけど、仲間になってみたい。そうやってだんだん人が集まってきて町を巻き込んでいく日々が、すごく楽しかったです。

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