『風、薫る』見上愛の演技は“強さと迷い”を両立させる 一ノ瀬りん役はキャリアの象徴に

彼女は自身が『風、薫る』で演じるりんのことを「すごくまっすぐで優しく、それでいて少しうかつなところもある、とても愛らしい女性です」(※2)と答えている。見上の言葉通り、第1話の放送で登場したりんは、のほほんとした語り口のなかでも、素直な疑問を見て見ぬふりしない静かな意思の強さを感じさせた。
家老の家柄を重んじる母親の美津(水野美紀)から「すごろくなど何の役にも立たぬではありませんか」告げられたときは、薙刀の稽古に打ち込んでいる最中でも「母上、薙刀も今はもう役に立たんのではありませんか」と率直な疑問をぶつける。さらに、父親の信右衛門(北村一輝)に仕えていた元陪臣の中村(小林隆)にも直接、なぜ父が武士を辞めて農家になったのかを問いかけていた。所々でおっちょこちょいな一面は垣間見えるものの、彼女のまっすぐな思いが一連のシーンからはほのかに感じられる。

また、見上はクランクインするまでに8カ月の期間で所作や、薙刀・書道の稽古に励んだという。父親とともに畑を耕す姿はすっかり農家の娘に見えるが、一つひとつの所作にはどこか武士の娘としての気品を感じさせる。相反するイメージを役柄に取り込み、表現するバランス感覚が長けているのだろう。
栃木の那須で穏やかな生活を送っていたりん。しかし、第1話のラストで幼なじみの虎太郎(小林虎之介)から、村で「コロリ(伝染病のコレラ)が出たって」と告げられる。これからりんに待ち受ける困難を暗示するかのように、頬をなでるような爽やかな風のそよぎは、最後に不穏な木々のざわめきへと音を変えた。それでも、彼女は初回でりんとは対照的に描かれた直美と出会い、2人ともに看護の世界へと足を踏み入れることになる。激動の時代を生きる女性バディの歩みと成長を、これから緩やかに見守っていきたい。
参照
※1. https://www.nhk.jp/g/ts/XWRG4KR6Z2/blog/bl/pzA9jOD69z/bp/p7K64V394G/
※2. https://realsound.jp/movie/2026/03/post-2348983.html
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















