名台詞に痺れる! 『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』の“ジェットコースター映画”的な魅力

『探偵たちの鎮魂歌』と『ソウ』の共通点

 街を歩けば、もう桜が咲きはじめていた。今年もこの季節がやってきたのだと、映画館に大音量で響く爆発音に想いを馳せる。劇場版『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』が4月10日に公開を控える中、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では4週連続で過去作を放送。その栄えあるトップバッターは、最新作と同じ横浜が舞台の『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』だ。

※本稿は『名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌』のネタバレにあたる内容に触れています。

実はソリッドシチュエーションスリラー映画?

金曜ロードショー「名探偵コナン 探偵たちの鎮魂歌」3月27日放送

 横浜の海辺に新設されたテーマパーク「ミラクルランド」の敷地内にあるホテルに、向かう毛利小五郎たち。娘の毛利蘭と少年探偵団を車に乗せ、依頼人のもとにたどり着くと、せっかくだからと「ミラクルランド」のVIPパスを貰うことに。しかし、そのパスには時限爆弾が仕掛けられていて、夜の10時までに事件の謎を解かなければ、爆発してしまう! 

 すでに何人もの探偵に声をかけていることを仄めかしたあと、地下室のようなところに閉じ込められた小五郎の知り合いの探偵を、見せしめに爆発させるところから物語は始まっていく。この冒頭のシークエンスがなんとなく2004年公開の『ソウ』を彷彿とさせるのだが、本作が2006年公開というだけあって、実は少し影響を受けていたりして。

 モニター越しに指示をする顔を見せない依頼主、依頼内容もただの暗号でしかなく探偵にヒントだけ与えてゲームのように解かせていくスタイル、タイムリミット付きの挑戦、踊らされる警察、時間切れになったら死、全てがエゴの押し付けで「無能な探偵は淘汰されるべき!」と選民意識のようなゴッドコンプレックスを持つゲームマスター(依頼人)……あれ、それなんてジグソウ? えっ、『探偵たちの鎮魂歌』って『ソウ』だったの? 少しどころか、かなり共通点があるではないか。

 完全にソリッドシチュエーションスリラーとしての条件を果たしている本作。しかし、そんな緊迫感を感じないのは、本作が劇場版第10作目を記念して“オールスタームービー”として作られているからだ。むしろこの要素が、大きな魅力であり、一方で作品を難しくさせている要因にもなっている。

オールスタームービーとしての魅力と甘さ

 本作は原作者・青山剛昌の意向で、メインキャラクターはもちろん、テレビアニメから劇場版に初登場するようなキャラクターまで、とにかく登場人物が多い。劇場最新作『ハイウェイの堕天使』で主要キャラとなる神奈川県警刑事部捜査一課の横溝重悟も、本作で劇場版初登場。そのほか、服部平次の父・平蔵や遠山和葉の父・銀司郎、そして交通部交通執行課の宮本由美や、『まじっく快斗』でもお馴染みの白馬探が顔を出す。

 この取り組みには、興収的な狙いもあった。『名探偵コナン』のアニメ企画を生み出したプロデューサーの諏訪道彦は、劇場版が子供の頃から作品に触れてきた大人がまたシリーズに触れるきっかけになることを踏まえた上で、以下のように2019年のインタビュー(※)で語っている。

 「『探偵たちの鎮魂歌(レクイエム)』(2006年公開)はまさにそうした復帰志向を強く打ち出した作品です。怪盗キッドや服部平次、白馬探といった人気キャラクターがすべて登場するオールスター映画にしたことで、いったんは落ち込んだ興行収入をもう一度30億円まで戻すことができたんです」

 つまり、興収的には成功を収めた本作。ただ、皮肉にも人気キャラとして引っ張り出された白馬が、実は終始怪盗キッドが変装した姿であり、白馬本人が不在だったことはかなりもったいない。他にも、本作の舞台である遊園地に佐藤美和子を高木渉がデートをしに来ている設定が、劇場最新作『ハイウェイの堕天使』でも重要エピソードとして語られるアニメ第304話「揺れる警視庁 1200万人の人質」のことを踏まえると、なかなかにむごかったり、妃英理とのやりとりで夫婦の絆を見せながら、コナンと共に現場で一緒に捜査し、推理も自力でなかなかいい線までいって少しカッコよかった小五郎が、最後にはコメディに全振りさせられたりと、キャラクター個々の扱いが丁寧だったか考えると、少し疑問に思う部分もある。

 このように、「とにかくあの人もこの人も出てくる!」といった“お祭り志向”が強く、逆に肝心なサスペンスやミステリーの詰め、描写が甘い。それでも、まるでジェットコースターのように客を振り落としそうで振り落とさない、勢いで走り抜く! それがこの映画の楽しさでもあるのだ。

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