『夫に間違いありません』松下奈緒が示した“悪女”の条件 キービジュアルに隠された真実

3月23日放送の『夫に間違いありません』(カンテレ・フジテレビ系)最終話は、遺体の取り違えから始まったサスペンスをしめくくるにふさわしいエピソードだった。
聖子(松下奈緒)は一樹(安田顕)に、店と家族を守るために紗春(桜井ユキ)を殺してほしいと頼む。その頃、天童(宮沢氷魚)は薩川(大朏岳優)から、DVを受けていたのは希美(磯村アメリ)ではなく、幸雄(今里真)の元妻だったことを知らされる。紗春は希美を虐待していなかった。そのことと聖子が幸雄の免許証を借りに来た事実、薩川がなにげなく口にした一言から、天童はある可能性に気づく。
生きていた夫と共謀して保険金を着服、それを知人に知られ、週刊誌記者にかぎつけられる。知人が夫を殺したことを知って、ともに真実を葬ろうとする。しかし、連れ子に暴力を振るう知人を止めようとして、互いに破滅へと突き進む。というのが前回までの流れだった。その途中で、夫が不倫相手のキャバ嬢を殺したり、弟が結婚相手の義母である議員に利用されて不正に手を染めたり、長男は進路選択をこじらせて同級生と青春し、義理の母は認知症が軽快するといったこともあった。
それら一連のエピソードの起点になっているのが、2年前のクリスマスの夜の出来事である。紗春が酔った幸雄を車に乗せて橋の上から突き落とした、繁華街で一樹とニアミスしたあの夜である。その日、散らかった紗春の家で起きたことについて、まるで紗春に原因があるかのように描かれていたが、真相はむしろ逆だった。あまりにひどい幸雄の行状に、紗春が殺意を抱いたのだ。希美を守るために。
かなり入り組んだシナリオである。それに輪をかけて、聖子の考えたことは、たとえ事前にクリスマスの日の真相を知っていても、予想は難しかったかもしれない。一樹を殺して、遺体を幸雄に偽装すること。そう来るかと思っていたら、さらにひとひねりある二重の驚きが待っていた。松下奈緒が事前にコメントしたように、良い意味で裏切りがあり、ドラマのどんでん返しが見事に決まった印象だ。
最終話のタイトルは「家族のために罪を犯した女は聖母か悪女か」だった。家族を守ろうとして罪を重ねる女性たちは、見る角度によって聖母でも悪女でもあるのだろう。罪は罪として、そこにある思いを簡単に否定することはできない。何より罪を犯した彼女たち自身が、その重さを受け止めている。そうするのは家族のためだ。たとえ自分が罪を一身に背負うとしても、子どもたちを守らなければ。誤解をおそれずに言うなら母性の発露であり、最終的に愛に帰着する物語だったと思う。
最終話を観たいまにして思うと、キービジュアルの背中合わせに並んでこちらを見る松下奈緒と桜井ユキ、その間にある切り裂かれた運転免許証と安田顕の顔写真がすべてを物語っていた。男性目線では、さんざんクズ夫を演じ続けて、最後の最後に逆転ホームランを放って逝った一樹こそ父たちの思いを背負う聖人だった、と言ったら言いすぎだろうか。
全12話の濃密なサスペンスは、月曜の夜更かしとして観るには重すぎると感じることもあったが、ドラマの軸をぶらさず、構想を映像化したスタッフ・キャストに拍手を送りたい。特に安定した集中力で演じきった松下奈緒は、これまで観たことのない表情をいくつも見せてくれた。『スカイキャッスル』(テレビ朝日系)、そして今作と、“悪女もの”をものにした松下が、次はどんな悪女を演じるか楽しみである。
川で発見された遺体を、「行方不明になっている男性に間違いない」という親族の証言を受けて引き渡したが、後日その男性が帰宅したことで、“遺体の取り違え”が発覚したという衝撃的な事件に着想を得たサスペンスドラマ。
■放送情報
『夫に間違いありません』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:松下奈緒、桜井ユキ、宮沢氷魚、中村海人、松井玲奈、山﨑真斗、吉本実由、白宮みずほ、大朏岳優、二井景彪、磯村アメリ、前川泰之、朝加真由美、余貴美子、安田顕ほか
脚本:おかざきさとこ
演出:国本雅広、安里麻里、保坂昭一
プロデューサー:近藤匡、柴原祐一
音楽:桶狭間ありさ
主題歌:tuki.「コトノハ」(月面着陸計画)
制作協力:ダブ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
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