『夫に間違いありません』でぶつかり合う 松下奈緒×安田顕×桜井ユキ×宮沢氷魚の演技合戦

松下奈緒主演のカンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『夫に間違いありません』が3月23日に最終回を迎える。
妻・聖子(松下奈緒)が夫・一樹(安田顕)の遺体を誤認し、保険金を受け取った後に、死んだはずの一樹が帰還するところから始まったサスペンスは、聖子の周りを嗅ぎ回る記者・天童(宮沢氷魚)や急接近してきたシングルマザー・紗春(桜井ユキ)、4人それぞれの“正義”がぶつかり合う展開となっている。
それはつまり、松下奈緒、安田顕、桜井ユキ、宮沢氷魚による“演技合戦”が繰り広げられているということでもある。
一樹は、家族の生活の平穏を守るために“潜伏生活”をしているが、聖子を妊娠させてしまったり、栄大(山﨑真斗)に呼び出されて会ったりと、もはや“死んでいる”ということにするには無理がある。だが保険金を騙し取ったり、瑠美子(白宮みずほ)を殺してしまったりと何度も超えてはいけない一線を超えてしまったからなのか、その佇まいに生気がないのは確かである。そんな一樹が、一瞬だけ目の光を取り戻したように見えたのが、聖子に第11話で「お金は全部あげる」と言われた時だ。それまで聖子と目を合わせないようにしていた一樹は、その言葉でしっかりと聖子の目を見つめるように向き直った。そして心配したのが、子どもたちの将来や学費のこと。どうしようもない一樹ではあるが、やはり心には“家族のため”という思いがある。このように、ある一言がきっかけでスイッチが入ったように表情を切り替えられるところに、安田の演技の凄みを感じた。
向き合う人によって表情や仕草を変えるという意味では、紗春もすごい。勤めているスナックのママから立ち退きを迫られた紗春は、すがりたい気持ちをグッと堪えてそれを了承する。それくらい迷惑をかけているという自覚があるからだ。一方で、希美(磯村アメリ)への虐待を疑い、やってきた児童相談所の職員には、強気で対応する。弱みを握っている聖子には、さらに強気で、何度も執拗に電話やメッセージをして恐怖心さえ感じるくらいだ。桜井はそんな紗春の多面性をしっかりと演じ分けている。
記者であるときとそうでないときとに大きな違いがあるのが天童だ。聖子に真実を話すように説得する天童の口調は穏やかだったが、自分の部下には命令口調が多く、その手柄を褒めるときも「やるじゃねえか」と語気が荒い。編集長の山上(前川泰之)に「なんのために真実を暴いているんですか?」と食ってかかるように対峙したところも“青っぽさ”を感じさせた。正義や真実を追求する記者であるときは、自分の中にある熱量を抑えられない様子が伝わってくる。『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)やNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』などでクールめの品の良い男性を多く演じてきた宮沢にとって、この天童という役は真逆。だが、そんな熱い男もまた巧みに演じられることを証明してみせた宮沢は、本作でまたひとつハマり役を獲得したといえるのではないだろうか。
そして、表情はほとんど変えずに心の内で大胆な計画と決断をし、どんどん行動していくのが聖子。最終話直前の第11話ではまさかの「紗春殺害計画」を実行しようとする。その直前には紗春に脅され、家と店を売ってでも騙し取った保険金相当の5000万円を返そうと奔走していたのに、どこかで緊張の糸ならぬ倫理観の糸がぷつりと切れてしまったらしい。そのきっかけが明確にわからないのが聖子の特徴である。松下は『大追跡〜警視庁SSBC強行犯係〜』(テレビ朝日系)で「捜査一課のエース」と言われる主任を演じたように、“聡明で真面目な女性”がよく似合う。もちろん聖子にもその側面があるが、真面目さが負の方向にも暴走しやすい。つまり、聖女にも悪女にもなれてしまうということだ。その切り替わりを悟らせないところに、松下の芝居の素晴らしさがある。私たちは結局のところ聖子に翻弄されてしまうのだ。
天童は「家族のために罪を犯した女は聖母だと思いますか? 悪女だと思いますか?」と問うた。4人の演技のぶつかり合いを堪能しながら、その答えが出る瞬間を楽しみにしたい。
川で発見された遺体を、「行方不明になっている男性に間違いない」という親族の証言を受けて引き渡したが、後日その男性が帰宅したことで、“遺体の取り違え”が発覚したという衝撃的な事件に着想を得たサスペンスドラマ。
■放送情報
『夫に間違いありません』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:松下奈緒、桜井ユキ、宮沢氷魚、中村海人、松井玲奈、山﨑真斗、吉本実由、白宮みずほ、大朏岳優、二井景彪、磯村アメリ、前川泰之、朝加真由美、余貴美子、安田顕ほか
脚本:おかざきさとこ
演出:国本雅広、安里麻里、保坂昭一
プロデューサー:近藤匡、柴原祐一
音楽:桶狭間ありさ
主題歌:tuki.「コトノハ」(月面着陸計画)
制作協力:ダブ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
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