『キンパとおにぎり』はただの異文化ラブストーリーではない 映像が示す“孤独”の共有

『キンパとおにぎり』が示す“孤独”の共有

『あの子は貴族』にも通じる、都会で恋をする困難と愛おしさ

 これまで手を替え品を替え作られてきた、国籍と文化のギャップを描くラブストーリーよりも、『キンパとおにぎり』には一段深みが加えられているのを見ると、シリーズ構成に名を連ねている岨手由貴子監督の『あの子は貴族』が思い起こされる。

 もちろん本作では、主人公の一人である裕福な生まれの華子(門脇麦)がタクシーで都会のビル群を抜けて帰宅するシーンのような分かりやすい都市の描写はない。ただ、たとえば大河とリンにとって思い出深い公園に置いてあるライトアップされた廃電車や、駅前のネオンの様子など都市の風景がそこかしこに立ち現れているのは明らかだ。

 また、大河とリンの出会いはいわば偶然ではあるが、仲が深まるきっかけは学生寮から退去せざるをなくなったリンの家探しだった。一緒に家を探してあげるという展開は、ユンギョルに言わせると驚くような進展の早さではあるが、異国であり、しかも都会では生活の基盤を維持することは恋愛よりも難しい。東京という多くの人が“孤立感”を抱きがちな都会を舞台に女性同士の連帯を描いた『あの子は貴族』のように、『キンパとおにぎり』もまた、都会で暮らし、そこで誰かと出会い恋をすることの困難と愛おしさを映し出しているように感じる。

 大学駅伝を諦めて以降、自分の夢に向き合うことを恐れていた大河は、管理栄養士を目指すことで挫折を乗り越え、一度は広告のコンペティションに落選したリンもまた、韓国の会社からオファーを受ける。互いの目標が前進した二人だが、それは同時に遠距離恋愛の始まりとも言える。こうして来たる最終話には、再び二人に訪れた危機がほのめかされていて、ファンをやきもきさせていることだろう。ただでさえ互いを理解する/させることが上手くない、つまり恋愛下手な二人に距離が生まれてしまえば、やはり破局しかないのだろうか。

 そんなときまた想起させられるのが、本作の全エピソードを通じた特徴となっている、映像にヴェールがかけられたようなソフトフォーカスだ。幻想的な風景を作り出すこの技法は、とりわけ夜のシーンだと、街灯などの光源が柔らかく拡散し、温かみを作り出す。大河とリンの公園でのキスシーンや、二人が別れて再び付き合うことを話し合う廃電車でのシーンなど、ドラマの中で特にロマンティックな場面のほの明るいルックは、それまで“孤立感”のただ中にいた二人の感情を包み込むようだ。

 大河が「どこにいてもリンを支える」というセリフ以上に、このドラマを貫くルックこそが、大河とリンのハッピーエンドを予感させる。いやもしかしたら、ビターエンドかもしれない。それでも互いを分かり合ったうえでの決断ならば、充分に幸福だと言えるのではないだろうか。

『キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう~』の画像

ドラマプレミア23『キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう~』

駅伝エースとして名を馳せるも、挫折し小料理店で日々を過ごす大河と、韓国からの留学生リンが偶然の出会いから距離を縮めていく模様を描く。

■放送情報
ドラマプレミア23『キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう~』
テレ東系にて、毎週月曜23:06~23:55放送
Netflixにて、各話放送と同時タイミングから世界独占見放題配信
ネットもテレ東(テレ東HP、TVer、Lemino)にて見逃し配信
出演:赤楚衛二、カン・ヘウォン、ムン・ジフ、深川麻衣、片岡凜、福山翔大、ソ・ヘウォン、パン・ウンヒ、遊井亮子、中島ひろ子、三浦誠己、渡辺真起子、吹越満
シリーズ構成:岨手由貴子、山田能龍
脚本:イ・ナウォン、山田能龍、横尾千智、畑中みゆき
監督:林田浩川、畑中みゆき、小山亮太
プロデューサー:中島叶(テレビ東京)、小嶋志和(テレビ東京)、五箇公貴(BABEL LABEL)、向井達矢(ラインバック)
制作:テレビ東京、BABEL LABEL
製作著作:「キンパとおにぎり」製作委員会
©「キンパとおにぎり」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinpa_onigiri/
公式X(旧Twitter):@tx_premiere23
公式Instagram:@tx_premiere23
公式TikTok:@tx_premiere23

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