『あんぱん』『ぼくほし』『匿名の恋人たち』　2025年ドラマのベストカップルを選出！

　昨今のテレビドラマは、恋愛に主軸を置かない作品や、恋愛関係に収束しない関係性が求められがちだ。それは、長らく量産されてきた恋愛ドラマへのカウンターであり、多種多様な価値観や生き方が認められるようになった証でもある。

　恋愛ドラマは減少傾向だと思っていたものの、2025年上半期には、昭和の新婚夫婦を描いた超王道胸キュンドラマ『波うららかに、めおと日和』（フジテレビ系）が異例の大ヒット。下半期には、小栗旬とハン・ヒョジュが共演した『匿名の恋人たち』（Netflix）を筆頭に、大人のロマンス作品が続々と登場。『ザ・ロイヤルファミリー』（TBS系）では妻夫木聡と松本若菜、『終幕のロンド －もう二度と、会えないあなたに－』（カンテレ・フジテレビ系）では草彅剛と中村ゆりの恋模様が描かれた。そんな2025年のドラマの中から、超個人的ベストカップルを選んでみた。（※順番は放送順）

①『あんぱん』（NHK総合）今田美桜＆北村匠海

　やなせたかしの妻をヒロインのモデルに、国民的キャラクター「アンパンマン」誕生の軌跡を描いた朝ドラ『あんぱん』。やなせ夫妻を演じたのは、今回で6度目の共演となる今田美桜と北村匠海。映画『東京リベンジャーズ』等で知られる2人が、満を持して、朝ドラで夫婦役を演じることは、ファンにとってこれ以上ないほど胸が高鳴るキャスティングだ。
　
　『あんぱん』では、のぶ（今田美桜）と嵩（北村匠海）は幼なじみという設定になっている。明るく活発な“はちきん”おのぶに、嵩は長年ひそやかな恋心を抱いていた。2人の想いが通じた第17週「あなたの二倍あなたを好き」第85話は、朝ドラ史に刻まれる名シーンに。世間から“軍国少女の鑑”として祭り上げられ、戦争に加担してしまったことへの後悔を背負うのぶが、嵩が生み出したアンパンマンを通して、子どもたちに笑顔を届けてゆく晩年の描写は、胸に迫るものがあった。

②『続・続・最後から二番目の恋』（フジテレビ系、以下『続・続』）小泉今日子＆中井貴一

　恋愛ドラマにあまり興味がない人であっても、この2人の関係性はどこか眩しく映ってしまうのではないだろうか。千明（小泉今日子）と和平（中井貴一）の恋は、千明が還暦を迎えようとしている今なお、平行線を保ったままだ。『続・続』では、千明と瓜二つの妻に先立たれた成瀬（三浦友和）も加わり、大人同士の恋の行方は、まだまだ落ち着きそうにない。

　ときに悪態をつき合いながらも、誰にも見せられない弱みを打ち明けられる相手がいること。変わりゆく時代のなかで、「どんな形であれ、ずっと一緒に生きていくんでしょ？ 私とあなたは」（※）と言ってくれる人がいることは、なんと幸せなのだろう。夜の極楽寺駅前で、千明と和平がハグを交わした第10話は、2025年のドラマシーンを語るうえで欠かせない、象徴的なエピソードだ。
　
　2人に結ばれてほしいのか、それともこのままでいてほしいのか。いよいよ自分でもわからなくなってきた。けれど、いくつになっても未来に恋するふたりのように、歳を重ねてゆきたいと思ったことは、確かである。

③『僕達はまだその星の校則を知らない』（カンテレ・フジテレビ系）磯村勇斗＆堀田真由

　かつて不登校だった弁護士の健治（磯村勇斗）が、共学化に揺れる私立高校にスクールロイヤーとして派遣される『ぼくほし』。学校生活を通してさまざまな感情を知っていく健治が、宮沢賢治好きの国語教師・珠々（堀田真由）に抱いたのは、はじめての“恋心”だ。2人がゆっくりと愛を紡いでいくイノセントな恋愛パートは、現実の喧騒から離れた聖域のようにも映る。

　文化祭の長い一日が描かれた第9話では、恋模様が一気に動き出す。自分の無力さを痛感する珠々に、普段の彼女がどれほど誠実に生徒たちと向き合っているかを、健治は曇りのないまっすぐな言葉で伝える。それを受けた珠々が「好きです。あっ、い、言っちゃいました」と思わず声に出ちゃうシーンが、あまりにキュートすぎて打ちのめされた。眺めているだけでこちらまで幸せになれる、まさに“ポポム”な2人だ。