『ばけばけ』「雨清水トキ」はダジャレが出発点? “名前”にまつわる朝ドラ制作陣の葛藤

『ばけばけ』登場人物の“名前”秘話

 朝ドラにおいて、実在する人物名を役名として使用した例はそれほど多くないが、橋爪は「八雲は和歌が主題になっているので、なかなか変えにくいところもあり、今回はそのままにしました」とし、モデルとなる人物がいる作品ならではの苦悩を明かす。

「本当のことを言うと、僕は全部本名でやってもいいと思っているんです。とはいえ、朝ドラは近現代を描くことが多く、遺族や権利者もいらっしゃるので、すべての方に合意を取るのが難しい。さらには、史実や原作をどこまで改変するのか、それは改変なのか演出なのか、という難しさもありますよね。人によって許容度や考え方も違うし、何が正解かはわからない。そういった歴史があり、朝ドラでは一応フィクションの名前を使うことになっています」

 たとえば大河ドラマのように、モデルとなる人物の実名を用いる作品も多くある。橋爪は「その線引きはすごく難しいですよね。朝ドラをやる時には本当に毎回、議題に上がるんですよ。なぜ、名前を変えなければいけないのかと。いつも終わらない議論から始まるので、みんな迷っているんだと思います」と、朝ドラならではの葛藤を吐露した。

 なお、トキとヘブンは雨清水家の籍に入ることになるが、その一因となったのは、トキの元夫・銀二郎が未だに松野家の籍に残っていたこと。果たしてこれは、史実をもとにした設定なのか。

 橋爪によると、明治期の戸籍制度は非常に複雑で、“婿養子になるためには、まずその家の養子となり、そのうえで結婚する”という二段階の手続きを踏むのが一般的。そのため夫婦が離縁しても、養子縁組が自動的に解消されるわけではなかったという。

 さらには帰化制度も整っておらず、外国人が日本人になることも困難で、「ハーンは日本人女性の家に入婿した、初めての外国人だとされています。この方法であれば、結婚もして、日本人にもなれる。ある意味“裏技”のような方法だったんです。他にも、複雑な制度が絡み合っていて、そこをドラマですべて説明することはできないので、今回は“銀二郎が松野家の籍に残っていたから”という形で表現しました」と制作の背景を明かした。

 正式に夫婦となり、新たな人生のスタートを切ったトキと八雲。それでも筆が進まずもがく八雲だが、2人の歩みを最後まで見届けたい。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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