コンプラ時代になぜヤンキー作品が作られ続けるのか 『ヤンドク!』が受け継いだ不良文化

令和にヤンキー作品が作られ続ける理由

 では、現代におけるリアルな不良的概念とは何かと考えると、トー横キッズと呼ばれる若者たちのコミュニティや、その背後で蠢いている闇バイト等の犯罪を取り仕切る反社、半グレと呼ばれる人々の世界だろう。

 『闇金ウシジマくん』(小学館)や4月からNetflixで実写版が配信開始となる『九条の大罪』(小学館)といった真鍋昌平の漫画には、闇バイトのような裏社会の仕事に関わってしまう若者が登場するが、彼らは、ビジュアルこそヤンキーファッションの延長線上にある派手で凄みのあるものだが、80年代から続くヤンキーの伝統から大きく隔てた存在に見える。そのため彼らがフィクションの中で理想的なヤンキーとして描かれることはほとんどなく、登場するとしても不気味な悪役という形になる。

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 その意味でヤンキーにも光と闇が存在すると言えるが、その境界はやはり犯罪性の有無なのだろう。つまりヤンキーを主人公にしたフィクションが伝統芸能のように延々と作られている状況の裏側には、物語として消費するには洒落にならない危険な領域が存在しているということになる。

 その意味でも、ヒーローとしてのヤンキーは学校という閉ざされた空間と80年代という懐かしい過去においてしか存在できない存在だと言える。

 だが、その洒落にならない現実の領域に挑んだうえで、露悪的なピカレスクで終わらないヒーローとしてのヤンキー(不良)の物語を紡ごうという作り手もいる。

 それは2000年代ならば、宮藤官九郎が脚本を書いた『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)や『木更津キャッツアイ』(TBS系)といった作品がそうであり、近年であれば、阪元裕吾が監督した女殺し屋二人の活躍を映画やドラマで描いた『ベイビーわるきゅーれ』シリーズや、現在放送されている深夜ドラマ『俺たちバッドバーバーズ』(テレ東系)などがそうだ。

『ヤンドク!』©︎フジテレビ

 そして、現実と拮抗する不良のヒーローを成立させるためには、ヤンキー文化が継承してきた独自の美意識のようなものが改めて必要となる。

 それは「間違ったことは許せない」とか「困っている人がいたら助ける」といった理屈よりも先に生まれる衝動的な善意の発露だが、そこで正義や倫理という言葉をためらうことなく使える人間であれば、そもそも不良になんかならない。

 社会的な正しさからすらも外れてしまった人間にすら仲間として手を差し伸べるような素朴な優しさ、それは愚かな人間だけが持つことができる「義侠心」と言い変えることもできる。

 そんな義侠心を持った存在が、今はヤンキーという形をとってフィクションの中で求められている。

『ヤンドク!』©︎フジテレビ

 その意味で『ヤンドク!』がユニークなのは、病院を舞台にヤンキーの義侠心と組織の持つ利益優先の合理主義の衝突を描いていることだ。

 会社の労働環境やハラスメントに対する意識は年々高まっており、全体としては良いことだと思う。だが、そこからこぼれ落ちてしまうことも多く、それをすくいあげる存在としてヤンキーの義侠心が今は求められているのではないかと、『ヤンドク!』を観ていると強く感じる。

『ヤンドク!』の画像

ヤンドク!

バリバリのヤンキー娘が猛勉強の末に、脳神経外科医となり、病気に苦しむ患者に寄り添いながら旧態依然とした医療現場をパワフルに改革していく。

■放送情報
『ヤンドク!』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:橋本環奈、向井理、宮世琉弥、音尾琢真、馬場徹、薄幸(納言)、許豊凡(INI)、内田理央、大谷亮平、大塚寧々、吉田鋼太郎ほか
脚本:根本ノンジ
プロデュース:髙木由佳、貸川聡子(共同テレビ)
演出:佐藤祐市、淵上正人、菊川誠、朝比奈陽子
音楽:近谷直之
制作協力:共同テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/yandoku_fuji/
公式X(旧Twitter):https://x.com/yandoku_fuji
公式Instagram:https://www.instagram.com/yandoku_fuji/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@yandoku_fuji

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