『パヴァーヌ』は現代人の心を救う一作に ムン・サンミンらが繊細に演じる“心の再生”

そして、2人を導く狂言回しであり、本作にさらなる深い余韻を与えているのがヨハンの存在だ。ヨハンは自身の夢である小説のために、ノートに言葉を書き留めている。「ハッピーエンドはない、それにもかかわらず」。この一節に、本作のすべてが凝縮されている。人生に都合のいい奇跡は起きないかもしれない。それでも、誕生日に灯される1本のロウソクの光に救われる夜がある。「愛は幻想だ」と言い放ちながらも、誰よりも2人の恋を後押しし、2人が傷つかないよう盾になる。ヨハンの魂もまた、ギョンロクとミジョンの純粋な交流に触れ、少しずつ溶けていく。愛を否定することで自分を守ってきた彼が、皮肉にも2 人の「愛のキューピッド」として奔走する姿は、どこか切なく、そして愛おしい。ピョン・ヨハンが瞳の奥に宿した孤独と愛を信じたい気持ちの絶妙なバランスが、この矛盾を抱えた救済者を、血の通った1人の人間として見事に描き出している。

本作で3人が踏み出した一歩は、決して力強いものではないかもしれない。しかしその歩みには、人生を急ぐ必要はないという優しい肯定が満ちている。物語の中で、象徴的なエピソードが語られる。ネイティブ・アメリカンの人々は、馬を走らせている途中でふと立ち止まり、後ろを振り返るという。それは、速く進みすぎて、置き去りにしてしまった「自分の魂」が追いつくのを待つためだ。

タイトルの『パヴァーヌ』が、ゆったりとしたテンポの宮廷舞踏を指すように、本作は「速すぎる現代」において、立ち止まる勇気を肯定する。彼らの歩みは決して早くない。わずか2時間の映画の中でも、ただ一直線に光へ向かうのではなく、光と影の間を何度も行き来する。迷い、傷つき、それでも振り返りながら、自分の魂が追いつくのをじっと待つのだ。
私たちは日々、急ぎすぎていないだろうか。走ることに必死で、大切な魂をどこかに置き去りにしてはいないだろうか。『パヴァーヌ』が映し出すのは、3人の魂がようやく歩幅を揃え、自分自身の人生と合流するまでの静かな時間である。画面が暗転したあとに広がる、この物語の余韻の正体は、「これからは、自分の速さで歩いていいのだ」という自分自身への安堵感なのかもしれない。あなたの魂は今、あなたにちゃんと追いついているだろうか。
■配信情報
Netflix映画『パヴァーヌ』
独占配信中
出演:コ・アソン、ピョン・ヨハン、ムン・サンミン






















