重厚な社会派『東京P.D.』が支持を広げる理由 “硬質な芝居”と骨太な人間ドラマ

『東京P.D.』が支持を広げる理由

 たとえば、事件被害者の「実名報道」に踏み切ろうとする者たちの意図は理解できるし、これに戸惑う今泉の気持ちもよく分かる。人間的な“感情”に則るならば、誰もが今泉の側に寄るだろう。けれども引き裂かれる思いで実名公表に踏み切った結果、被害者遺族はもちろん、報道する側もまた、深く傷つくことになる。このあたりの登場人物の心の動きというのは、たとえこの事件と関わりのないお茶の間の私たちでも理解できるだろう。そう、同じように感情を持った人間なのだから。手触りは重厚で硬派なエンターテインメント作品だが、本作の持つヒューマンドラマとしての側面こそがリアリティを担保していると思う。そしてこれが、知られざる広報課の人々の活躍と私たちとを繋ぐのだ。

 そんな本作が成立しているのは、俳優陣の好演があってこそ。主人公の今泉を演じる福士を筆頭に、この『東京P.D.』は手堅い布陣に支えられている。2係で今泉の導き手となる安藤直司を緒形直人が演じているほか、刑事部の面々には味方良介、吉原光夫、津田寛治らが配され、広報課と深く関わる記者役として金子ノブアキが出演。いずれも硬軟自在な演技者だが、ここでは誰もが硬質な演技に徹している。

 彼らの演技に感じるのは、“重心の低さ”だ。その歩みの一つひとつが確実に、地面を掴んでいるとでも言えばいいだろうか。この“軽快さ”とは対極にある彼らの芝居が、各登場人物の実在感を生み出し、作品全体に生々しい緊張感をみなぎらせている。そしてこれが、本作のリアリティ獲得にもつながっているのだ。

 緒方演じる安藤は今泉に対し、広報課とは警察組織と社会のはざまにあり、人間の身体でいえば皮膚のようなものだと語った。これから本作は広報課と現代社会の関係を描きながら、各キャラクターのバックグラウンドにも肉薄していくこととなるはず。俳優たちの硬質な演技に魅せられ、骨太でスリリングな展開に翻弄されながら、広報課の実態の深部に触れていくことになるだろう。そこでは、情報を受け取る側である私たちの持つべきスタンスも提示されるに違いない。“極私的名作ドラマ”になるのは間違いないが、果たしてエンターテインメントシーンにおける新たな「名作」のひとつとなるか。

『東京P.D. 警視庁広報2係』の画像

東京P.D. 警視庁広報2係

警視庁記者・報道記者を経験した者が原案者となり、リアリティーにこだわり、広報という立場で事件解決に向けて奔走する姿を、事件発生時のメディアの裏側とともに描く。

■放送情報
『東京P.D. 警視庁広報2係』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:福士蒼汰、吉川愛、正名僕蔵、竹財輝之助、太田莉菜、谷原七音、本多力、緒形直人ほか
脚本(ライターズルーム方式):阿部沙耶佳、阿部凌大、島崎杜香
オープニング主題歌:syudou「暴露」(syudou商店 / A-Sketch)
企画・原案・プロデュース:安永英樹(フジテレビ)
プロデューサー:中村亮太
演出:岩田和行、植田泰史ほか
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/tokyopd/
公式X(旧twitter):@tokyopd_fujitv
公式Instagram:@tokyopd_fujitv
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