『呪術廻戦』「死滅回游」アニオリ演出の狙いは? 賛否を呼ぶ“禪院回”に4分間の長回し

『呪術廻戦』アニオリ演出の狙いは?

 しかしその一方、同作のアニオリ演出には「キャラクターの解像度を上げる」という狙いも読み取れる。たとえば同じく第48話「執行」では、誰もいない空き家の台所で血まみれの手を洗い流す虎杖の姿もあったが、これは「渋谷事変」で多くの人を犠牲にしてしまったという虎杖の心境と罪悪感を示唆したものと思われる。

 そんななかで注目を浴びたのが、禪院真希の“覚醒回”にあたる第51話「葦を啣む」の演出だった。同エピソードの後半では、真希が禪院家の面々と激闘を繰り広げていくのだが、そこで軽快な音楽が用いられていたことや、駆け足気味で甚壱などの細かな描写が省略されていたことに賛否が集まった。

 ここでも戦闘シーンを盛り上げる演出が追加されていたが、それよりも興味深いのは、“重さと軽さ”の対比だ。前半では禪院家が古くからの因習に縛られていることを暗示するように、重々しいホラー風の描写が用いられているのに対して、後半では真希がそんな家を破壊して自由を手に入れていく様子が、軽快なジャズ風のBGMと共に描かれている。

 あえて全編通して陰鬱な雰囲気を貫くのではなく、前半と後半のギャップで真希の解放感を表現する……というのが、ここに見られる演出の意図だ。“音”を効果的に使ったアニメならではの演出法でもあり、見どころの多い回だったと言えるのではないだろうか。

 それに続いて1月29日に放送された第52話「熱」も、“攻めた”演出の回だった。呪術高専3年生の秤金次に接触するため、アンダーグラウンドな賭け試合の会場に向かう虎杖と伏黒。そこで潜入を上手く成功させた虎杖は、秤と1対1の面談を行うことになるというストーリーだ。

 話題を呼んでいるのはこの面談シーン。まるで隠しカメラで撮影された映像のように、固定カメラによって緊迫の話し合いを映し出している。しかもその時間はおよそ4分に及び、一切カット割りが挟まれることもない。それによって、異様な緊張感を放つ映像が生み出されていた。

 派手なアクションシーンを入れたかと思えば、“静”を極めた演出でギャップを生む……。『呪術廻戦』が示すのは、型にとらわれない自由なアニメのあり方だ。原作が少年マンガの定型をいい意味で裏切ってみせる作品だったことを思えば、この上なく相性のいい映像化と言えるのではないだろうか。

■放送情報
TVアニメ第3期『呪術廻戦「死滅回游 前編」』
MBS/TBS系28局“スーパーアニメイズム TURBO”枠にて、毎週木曜24:26~全国同時放送
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、浪川大輔、緒方恵美
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:矢島陽介、丹羽弘美
副監督:高田陽介
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介、ACE
音楽:照井順政
音楽プロデューサー:小林健樹
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
オープニングテーマ:King Gnu「AIZO」(Sony Music Labels)
エンディングテーマ:jo0ji「よあけのうた」(Sony Music Labels)
©︎芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:jujutsukaisen.jp
公式X(旧Twitter)https://x.com/animejujutsu

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