法廷ものから刑事ドラマへ 『MERCY/マーシー AI裁判』が可能性を見出すAIの有用性

技術革新の連続によって実用性が高まり、急速に現代社会に浸透してきている「AI」(人工知能)。不確実性や融通の利かなさなどの弱点は日々改善され、ユーザーの生活に影響を及ぼすまでに成長を続けているといえる。そんなAIが、裁判によって被告に判決をくだす社会が訪れたとしたら……。映画『MERCY/マーシー AI裁判』は、そんなシチュエーションを舞台とした、変則的な近未来SF法廷劇だ。
しかし興味深いのは、そんな本作の設定から予想されるような、人工知能の暴走が社会や正義を破壊するといった「ディストピアSF」のような作品とは、全く印象が異なる映画だったということだ。では、いったい何が描かれているのか。ここでは、そんな本作『MERCY/マーシー AI裁判』の内容を深掘りしていきたい。
※本記事では、映画『MERCY/マーシー AI裁判』のストーリー展開に触れています
ストーリーは、刑事のレイヴン(クリス・プラット)が椅子に拘束された状態で目を覚ますところから動き出す。彼の前に設置された大きなディスプレイには、“マドックス”と名乗る女性(レベッカ・ファーガソン)の顔が映し出されている。彼女は、AI裁判官がイメージする自身の姿であり、人間として実在しているかのように、レイヴンに状況説明を始める。
この映画が描く近未来の社会では、被告が有罪である可能性が高いとAIが判断した重大事件については、証拠や証言を基にAI裁判官が判決をくだせる仕組みが出来上がっているらしい。しかも、これまでの被告はいずれも有罪になってきたという。それは、自身がその法整備のもとで犯罪者を逮捕し、AI裁判に送った経験のあるレイヴンにとっては説明不要の事実である。
彼にかけられたのは、“妻殺し”の容疑。しかし、レイヴンは朦朧としていて犯行時刻の記憶が薄れている。彼にとってまずいことに、マドックスが画面上で提示していく状況証拠の数々は、彼が犯人であることを物語っている。絶望的な状況に打ちひしがれるレイヴンだが、落ち込んでいる場合ではない。画面上には「90分」というタイムリミットが表示されており、その待ち時間を使い果たしてしまえば、そのまま“刑の執行”がおこなわれてしまうのである。
とはいえ、彼に無実を証明する可能性が残されていないわけではない。マドックスはそれでも基本的には“論理”を重視せざるを得ないように設計されている。その点、思い込みや自身の立場などに支配されがちな人間の裁判官よりも、じつは公平性が担保されているといえるかもしれない。
ここが、本作の大きな特徴だ。これまで多くのSF設定を組み込んだ物語では、社会的な意思決定をするAIは“悪”として描かれる場合が少なくなかった。しかし本作では、AIの情報調査能力と、司法によるあらゆる情報へのアクセス権限とが結びついたことで、超優秀な捜査マシーンとして機能することになるのである。そして、レイヴンには自分の利益を守る目的で、真犯人を見つけ出すために“彼女”の圧倒的な能力を使用できる立場になる。

























