岩崎う大だから成立する憎めない人物像 『ばけばけ』梶谷は朝ドラ史でも“異色”な記者?

これまでの「朝ドラ」にはいろんなタイプの記者が登場してきたが、『あんぱん』(2025年度前期)の東海林明(津田健次郎)のようなアツさは持ち合わせていないし、『虎に翼』(2024年度前期)の竹中次郎(高橋努)や『ブギウギ』(2023年度後期)の鮫島鳥夫(みのすけ)たちのような、ヒロインと対峙する存在でもない。梶谷はただただ調子のいい男なのである。
これをさらりと体現する岩崎が素晴らしい。セリフ回しや表情、ふとした仕草などで梶谷のキャラクターを強引に押し出すことなく、ただひたすら軽やかに演じようとしているように見える。岩崎のこの軽やかな演技の質感が、登場するシチュエーションや発するセリフによっては軽薄なものと映るのも味噌。松江の人々や私たち視聴者にユニークな情報を届けてくれる梶谷は、“羽織ゴロ”でもあるのだから。演じる岩崎はこのキャラクターをどのように捉えているのか。

本作の公式ガイドブックである「NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 ばけばけ Part1」にて岩崎は、「パワフルで神出鬼没。周りからどう思われるかはあまり考えずに動いているイメージです」と梶谷の特徴を端的に述べたうえで、「当時の新聞記者は、“羽織ゴロ(羽織を着たゴロつき)”と呼ばれていたように、インテリジェンスもあるけれど野蛮な部分もあったと思います。梶谷には、『読者が喜べばいい』というジャーナリストとしての正義がある一方で、正攻法で突撃することが取材相手のためでもあるという考えもある」と自身の考えを明かしている。
これまでの“梶谷吾郎=岩崎う大”の言動に触れてきた身からすると、この発言には大いに納得できる。他人の家にズカズカと上がり込み、梶谷はトキやヘブンに心労を与えている張本人だが、彼に悪意はない。もしも岩崎がイジワルな梶谷像を立ち上げていたならば、いまの『ばけばけ』の展開を楽しく眺めることはできなかったに違いないだろう。いまの『ばけばけ』の盛り上がりには、岩崎の存在が大きく貢献しているのである。
岩崎といえば、お笑いコンビ・かもめんたるとして2013年の「キングオブコント」で優勝し、2015年には「劇団かもめんたる」を旗揚げ。岸田國士戯曲賞に2年連続でノミネートされるなど、演劇の世界でも高く評価され、多くのファンから厚い支持を受けている。劇団の公演では劇作だけでなく演出も手がけているとあって、ドラマ作品などに出演する際には、この演出家としての視点が生きているのではないだろうか。頼もしい梶谷記者のキャラクターは、岩崎が演じるからこそ成立していると思うのだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK






















