TVアニメ『呪術廻戦』第3期でMAPPAが挑む「死滅回游」 物議を醸すアニオリ演出の真価

芥見下々の人気漫画を原作としたアニメ『呪術廻戦』は、呪いを祓う“呪術師”の過酷な戦いを描いたダークファンタジー作品だ。渋谷を舞台に壮大なバトルが繰り広げられた、前シーズンの「渋谷事変」編での衝撃的な幕引きを経て、2026年1月より第3期「死滅回游 前編」の放送が開始された。
現在までに第48話、第49話がリリースされ、物語は謎の術師・羂索(けんじゃく)が仕掛ける、呪術師同士が殺し合う巨大なバトルロイヤルゲーム「死滅回游」の入り口へと突入している。本シリーズを継続して手がける制作スタジオMAPPAが、新たな局面を迎えたシリーズをどう描き出すのかに注目が集まっている。
ここでは、そんな『呪術廻戦』の第3期のスタートの内容を振り返りながら、MAPPAの挑戦と視聴者の反応を含めて、アニメーション表現の問題についても考えてみたい。
※本記事では、アニメ『呪術廻戦』の第2期までの内容と、第3期・第48話、第49話の内容を明かしています
第3期は、絶望的な状況からスタートする。呪霊や呪術師、式神、そして“呪いの王”たる両面宿儺までをも巻き込んだ、凄絶な総力戦「渋谷事変」の影響は渋谷だけに収まらず、東京の都市部全域が崩壊するまでに被害が拡大するという、ほとんど“最悪”といえる結果となってしまった。騒動を生み出した羂索と、その企みを止めようとする呪術高専を中心とした術師たちのバトルは、決着がつかぬままに終幕となり、単身で局面を左右する“最強の術師”五条悟までもが捕えられてしまった。
そんな過酷な状況のなか、主人公はどうなっているのか。両面宿儺に肉体を乗っ取られ、多くの被害者を出してしまった虎杖悠仁は、あまりにも重い罪悪感を背負い、いまだ都市部に残る呪霊を、“受肉体”脹相とともに狩り続けていた。脹相が語るように、虎杖悠仁の呪術師としての能力は、真人との死闘をくぐり抜けたことで格段に練り上げられ、その強さは“鬼神”のごとき領域にまでレベルアップしている。
第48話ではそんな虎杖の前に、呪術界屈指の実力者である、呪術高専2年の“特級呪術師”乙骨憂太が現れる。彼は呪術界の上層部からの命令で、これまで五条悟の庇護下にあった虎杖に死を与えるべく、執行人として対峙するのである。また、その場所には“呪術界御三家”禪院家の当主の座を狙う禪院直哉も自分の目的を果たすために到達していたのだった。ここから、虎杖悠仁と乙骨憂太、禪院直哉と脹相の熾烈なバトルが展開することになる。
乙骨憂太については、『劇場版 呪術廻戦 0』(2021年)の主人公として活躍したことから、アニメ版のファンには、すでに印象深いキャラクターとなっているだろう。しかし、ここでの彼は冷徹かつ不気味な表情で、刀による無慈悲な攻撃を繰り出す。五条悟に次ぐ実力者とも噂される彼が刺客として命を狙うのだから、強さを増した虎杖とはいえ、とてつもない脅威となる。五条悟をも超えるという乙骨の膨大な呪力が可視化される演出は、視聴者に絶望的な印象を与えるものだろう。
ちなみに、その戦いのなかで東銀座の歌舞伎座をモデルにしていると考えられる建造物が盛大に破壊される描写には驚かされた。『呪術廻戦』のアニメーションシリーズは東宝が進めた企画だが、その作中で松竹が所有する歴史ある劇場が破壊されるところを描くのである。しかも、松竹本社とは目と鼻の先。つまりは“縄張り”、いや“結界”のなかであるはずなのだ。両社はさまざまな面で協力関係にあり、このシーンももちろん“仁義を通して”いるのだろうが、それでもメタ的なところで面白い試みだといえよう。
しかしアニメ版としての見どころは、むしろ脹相と直哉の戦いの方ではないだろうか。ここでは、アニメオリジナル(アニオリ)の演出として、直哉のハイスピードの攻撃のなかに、脹相の顔面を片手で殴りながらもう片方の手で髪をかきあげるナルシスティックな動き、いわゆる“舐めたプレイ(舐めプ)”が表現されている。このシーンは放送、配信後に世界中で話題を呼び、ネットミーム化するまでになった。
このアニオリが印象的なのは、それが単にアクションだけではなく、禪院直哉というキャラクターにマッチするものであるからだろう。芥見下々は性格の悪いキャラクターを描くのが異様に上手く、その解像度も高い。真人という、神経を逆撫でする最悪のキャラクター亡き後、その代わりとして提示されるのが、この口を開けば悪態をつき、ほとんどの他人や女性全体までをも見下している直哉ということなのだろう。そんな彼だからこそ、この“舐めプ”が映えるということになる。























