『ばけばけ』の料理はなぜ心に残る? “大阪朝ドラ”広里貴子の丁寧な仕事ぶりが光る

『ばけばけ』の料理はなぜ心に残る?

 新年を迎え、後半戦に突入したNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。本作では、時代の空気感や登場人物の心情を物語るものとして“照明”が一役買っているが、もうひとつ大きな役割を果たしているのが“食事”だ。今回は、これまで物語に登場した食事シーンや料理描写を振り返ってみたい。

 人間の生活を支える3大要素の一つにして、最も生命維持に直結する「食」。当然のことながら、主人公と周りの人たちの日々の営みを描いていく朝ドラにおいて、食事シーンは欠かせないものだ。

 特にNHK大阪放送局(BK)の朝ドラは食を題材とした作品も多く、日清食品の創業者である安藤百福と妻・仁子をモデルにしたと思われる『まんぷく』(2018年度後期)、平成ギャルが人々の健康を支える管理栄養士へと成長していく姿を描いた『おむすび』(2024年度後期)など、枚挙にいとまがない。それ以外の作品に登場する食事シーンも、2013年度後期放送の『ごちそうさん』以降、14作連続でBKの朝ドラの料理指導をしている広里貴子の丁寧な仕事ぶりが光る。彼女が手がける料理は画面から今にもおいしそうな香りが漂ってくるようで、視聴者からも「観ているだけでお腹が空いてくる!」と評判だ。

 食事は時代性と地域性、その人物の生活水準を色濃く映し出す。例えば、第1話で松野家の食卓に並んでいたのは白米、味噌汁、焼き魚、漬物。明治初期の庶民の食事としてはスタンダードなラインナップと言えるだろう。一方で魚は一尾、それも小さいもので、没落士族である松野家の厳しい経済状況が伝わってきた。トキ(髙石あかり)の父・司之介(岡部たかし)が借金をこさえ、貧しい人々が住む天国町に引っ越してからは、白米が麦飯に変わり、一汁一菜の、より質素な食事内容に。

 しかし、どんな状況でも松野家にとって欠かせないのが、トキの大好物である「しじみ汁」だ。司之介が「松江人の血液」と言っていたが、当時から松江の宍道湖ではしじみ漁が行われており、人々の健康を支えていた。広里は松江の市場や料亭に足を運び、しじみの調理方法をリサーチしたのだとか。制作統括の橋爪國臣が「しじみの洗い方を含め、広里さんが細かく取材メモを作ってくれていて、それを生かしながら台本を作っています」(※)と語っている。また、しじみ料理の撮影にはすべて宍道湖産のしじみを使用するという徹底ぶり。そのこだわりが、トキたちがしじみ汁を飲んだ時の「あ〜っ」という、思わずこちらまでごくっと喉が鳴るような反応につながっているのだろう。本作において、しじみ汁は時にうらめしく思える世の中の小さな幸せを象徴している。

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