今祥枝の「2025年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 ポスト・ハリウッド時代のリアリティ

今祥枝の2025年ベスト海外ドラマTOP10

ノスタルジーを喚起する『広場』と『ザ・スタジオ』

『ザ・スタジオ』画像提供:Apple TV

 今年は、こうした米国人によるある種の“内省的”な作品群に惹かれた一方で、王道回帰的なジャンル作品にも秀作が多かった。王道のテーマでありながら野心も感じさせる『アドレセンス』や『ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室』、いい意味でノスタルジーを喚起する『広場』(ソ・ジソプ最高!)と『ザ・スタジオ』、そして社会派ドラマのお手本とも言えるポーランド作品『へヴェリウス』は、社会的トラウマを題材として感情の再現にとどまらない欧州ドラマの強みが際立っていた。

韓国ドラマ「交渉の技術」予告第1弾

 「韓国の映画産業終わってる」的に溜飲を下げる流れも今年MAXだったが、すでに世界的な需要を確保している韓国作品は、2025年を1つの円熟期として、次のフェーズを見据えているようにも見える。M&Aを題材にした『交渉の技術』は、韓国ドラマとしてというより、好みの金融業界ものとして観たところ、一貫して抑制されたトーンも含めて欧米ドラマで育った自分にはしっくり来て、結果的にハマってしまった。対照的に、韓国的な勢いと独特の作風をやり切った感のある『ハイパーナイフ』や『トリガー』も面白く観たが、今回は選外とした。

『エイリアン:アース』©2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

 第1位とほぼ同率の第2位は、ご贔屓ノア・ホーリー先生の集大成と言っていい作品だ。原点回帰と見せかけながら、まず視聴者が求める世界観をしっかり踏襲し、観終えてみれば「圧倒的にホーリーの世界だった」と思わせる独創性は、『FARGO/ファーゴ』から確実に受け継がれている。確立されたIPフランチャイズにおける、1つの最適解と言えるだろう。これは近年のゲームIP映像化作品の成功例にも通じる部分があるのではないか。ちなみに本作は主にタイで撮影された。海外ロケというと、その土地ならではの景色に目が行きがちだが、実際には天候が不安定な地域でもスケールの大きなスタジオ撮影が可能であることのほうが重要だ。『ザ・ビーチ』の時代から約20年をかけて整備されてきたタイの撮影環境の良さが、いよいよこの規模の作品を誘致することで世界に広く認識されたのだ。翻って、ここでも日本はどうなっているのか、と考えてしまうのは私だけではないはず。

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