『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の結末は何が“正解”? 勝男と鮎美の“成長”を振り返る

『あんたが』の結末は何が“正解”?

 ところで、この物語は、別れから始まるラブロマンスでもある。これから鮎美との関係はどうなっていくのだろう。

 鮎美は髪型を変え、服装を変え、彼氏も変えるが、そこでもまだ結婚して普通の奥さんになることしか考えられない自分に気づき、愕然とする。自分が何を好きで、何をしたいかすらわからないことに気づき、「自分らしさ」を探さざるを得なくなる。

 鮎美はずっと「選ばれる」ことに価値を置いてきた。スペックが高い男に好かれるように、モテに全ベットしてきたから、自分自身はどこにもなくなってしまった。それは、自分をモノ化することにほかならないからだ。

 勝男は鮎美に一途だが、「女らしさ」というスペックを失ってもなお彼女が好きだと思う核心は何なのか。無理やり行われた両家の挨拶の席で、鮎美のことを「どうしようもない子なんです」という母親に向かって、こう援護する。

「鮎美さんは僕なんかと結婚しなくてもちゃんと生きていける人です。誰かに選ばれなくても自分で立って自分で選べる人です」
「どんなことがあっても自分の手でなんとかする。そんな鮎美さんだから、僕は好きになったんです」

 勝男は、鮎美が勝男を振ったからこそ鮎美のことがより好きになったのかもしれない。

 ジェンダーロールから解放され、主体性を取り戻した時、二人はどんな選択を取るのだろうか。ただ元さやに戻るだけでは、きっと親世代の熟年離婚のようになるだけだろう。そうではなく、二人が一緒に生きられるようになるためには何が必要なのか。それは、「もうわかってもらおうとも思わない」から、わかってもらうをあきらめない関係になることではないだろうか。

 「男は」「女は」と主語を大きく語ってしまいがちで、すぐに分断してしまう世の中だからこそ、諦めない不断の努力が必要だ。勝男と鮎美のパートナーシップがどうであれ、分かり合うを諦めない関係になってくれることを期待したい。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の画像

火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』

谷口菜津子による同名漫画を原作としたロマンスコメディ。「料理を作る」というきっかけを通じて、“当たり前”と思っていたものを見つめ直していく男女を描く。

■放送情報
火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:夏帆、竹内涼真、中条あやみ、前原瑞樹、サーヤ(ラランド)、楽駆、杏花
原作:谷口菜津子『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(ぶんか社『comicタント』連載)
脚本:安藤奎
演出:伊東祥宏、福田亮介、尾本克宏
プロデューサー:杉田彩佳、丸山いづみ
編成:関川友理
音楽:金子隆博
主題歌:This is LAST「シェイプシフター」(SDR)
制作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antaga_tbs/
公式X(旧Twitter):@antaga_tbs
公式 Instagram:antaga_tbs
公式TikTok:@antaga_tbs

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