『べらぼう』宿怨を越えたチーム結成の激アツ展開 平賀源内がもたらした“あの頃”の楽しさ

自身の息子・家斉(城桧吏)を将軍にし、幼い間は定信に政を任せてきた治済。そして、家斉が成長するやいなや、もはや用済みとばかりに定信を失脚に追い込んだ。その動きを見た高岳は、この一連の江戸城の動きはすべて治済によって操られていたのだと確信して、定信のもとへ話をしに来たという。「宿怨を越え、ともに敵を討つべく手を組んだ」と定信から説明を受ける蔦重。そして、「どうだ、蔦屋重三郎。我らとともに敵を討たぬか? そなたとて心ひとつであろう」と提案するのだ。

だが、今や相手は将軍の実父。そして、あの意次でさえ勝つことが叶わなかった相手だと思うと、自分にあのラスボスに打ち勝つ力があるのかと尻込みしてしまうのも無理はない。そして、なによりも手を組もうと言っている相手が、これまで自分を追い込んできた定信である。身上半減を挽回しようと無理をした結果、歌麿のことを大切にしきれなかったところがある。ていにも苦労をかけた。もし定信と件がなかったら、子だって無事に抱くことができたかもしれない。そして何よりも、恋川春町(岡山天音)を失わずに済んだかもしれない。

宿怨を越えるというのは、そう簡単なことではない。しかし、一方でこの物語以上に、蔦重の心を動かす夢も残っていないようにも思える。源内から授かった「耕書堂」という名、“書を持って世を耕す”という志だ。蔦重は定信との戦いを通じて、自分はいち本屋でしかないことを十分に痛感した。世の中を変えることなんて、自分の分を超えた夢かもしれない。それでも、人を傀儡のように扱う者が上に立つ国で、豊かな未来が育つわけがない。蔦重がいち本屋としてできることは、治済が操る世界を「思い通りにはさせない」こと。そして、みんなが笑える形でひっくり返すこと。その痛快な作戦に“写楽”という名が潜んでいると思えば、期待は高まる一方だ。
もちろん、史実として江戸城メンバーと蔦重がこうして手を組んだとはなかなか考えにくい。だが、否定しきれる資料もまたない。「わからないなら、楽しく考える」。そのモットーこそ、『べらぼう』の物語を可能にしている筆の力だ。黄表紙でいえば、この『べらぼう』の物語もあと僅か。残り少ないページ数をさみしく噛み締めつつ、最後まで笑える未来を祈りながら見届けたい。
■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK





















