『ばけばけ』髙石あかりは表情だけでうらめしいを体現する “タエ”北川景子がまさかの姿に

レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)と花田平太(生瀬勝久)のいざこざから端を発したヘブンの女中探し。NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第28話は、女中になるよう頼まれたトキ(髙石あかり)の怒りから、彼女の誇りが見える回だった。
夜に松野家を訪れた錦織(吉沢亮)から、ヘブンの女中になるように頼まれる。女中兼めかけを志望していたなみ(さとうほなみ)は、ヘブンから女中を断られていたのだ。その理由を、錦織はなみが百姓の娘だったからではないかと考察していた。教養のある士族の娘をご所望なのだと。

士族の娘として、錦織が頼ったのがトキだった。提示された月の給金は20円。花田旅館の女中・ウメ(野内まる)の給金は90銭、小学校の教師として働き始めたサワ(円井わん)の給金は4円。とんでもない破格だ。トキはその金額の裏には、女中以上の働きを求める条件があることを予想する。錦織は悪い話ではないというがトキからすれば、女中として身体まるごと差し出すようなものだ。そんな仕事でも、家族のためになるだろうという錦織の言葉は、トキの人としての尊厳を傷つけるものになり得る。
トキはキッと目を見開き、錦織への怒りを露わにする。家族のために、友人のために行動するトキだが、彼女のなかには越えられてはならないラインがある。髙石の表情からは、トキが士族の娘として持ち続けている矜持が感じられた。
世界がうらめしいとは、まさにこのことだ。トキは幼いころと変わらず、フミ(池脇千鶴)に怪談をねだる。すっきりと朝を迎えるものの花田旅館に行けば、ヘブンに会ってしまう。トキにとってヘブンは、大金を払って家事やそのほかの世話をしてくれる教養のある女中を求める男性になってしまった。
これまでヘブンに戸惑いを見せることなく、笑顔で握手をしていたトキだったが、ヘブンを見る目が完全に変わってしまった。表面上は変わらず握手を交わすヘブンの手を見るトキの視線や、しじみの殻を粉砕する表情には、ヘブンへの軽蔑と静かな怒りが宿っているように見える。

第28話は、錦織へのはっきりとした憤り、ヘブンへの軽蔑と、1話のなかでトキがこの世のうらめしさに包まれた時の反応が見える回となった。ふとした視線や表情の緊張具合で、感情を伝えてくれる髙石の演技力の高さを堪能できた回でもある。髙石の表情を丁寧に捉えるカメラワークも印象的だった。
家が貧乏だとはいえ守りたい矜持があるトキの前に、目を疑うような光景が。松江を出ていったはずの雨清水タエ(北川景子)が、道端で物乞いをしていたのだ。トキにとって、士族の誇りそのものだったタエが、捨てられない誇りを持ちながらも施しを乞うていた。

雨清水家の現在の状況が、トキの考えを変えるきっかけになるのだろうか。ヘブンが百姓の娘であるなみを断ったことにも、なにか別の理由がありそうだ。しじみさんと呼ぶヘブンに握手を返すトキの笑顔が戻ってくるといいが……。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK





















