『ザ・ロイヤルファミリー』“栗須”妻夫木聡の人を見極める眼力 目黒蓮が物語の中心に?

『ザ・ロイヤルファミリー』目黒蓮が中心に?

 第172回天皇賞(秋)で3歳馬のマスカレードボールがG1初制覇を決めた11月2日、『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)第4話が放送された。

 有馬記念での戴冠を目指す山王耕造(佐藤浩市)と栗須栄治(妻夫木聡)の“ロイヤルファミリー”が野崎牧場から新馬のロイヤルホープを迎え入れたのが第3話。第4話では、ロイヤルホープに騎乗するジョッキー探しが焦点になった。

 2013年、若馬のロイヤルホープは、野崎牧場で1年間体を作り上げてブレーキングへ。鞍やハミを装着し、人を乗せるための訓練がブレーキングで、馴致とも言う。日高産のホープは言うことを聞かない“荒れ馬”で、騎手選びは難航していた。めぼしいジョッキーは当たり尽くし、広中(安藤政信)のリストに残っていたのが佐木隆二郎(高杉真宙)。だが、佐木はいわくつきの人物だった。

 第4話は、人を見極める眼力が問われていた。「馬のことはわからない。だから人間の信頼に賭ける」と耕造は言う。では、人間の真贋は何をもって判断するのか。耕造の信念を自身の信条とする栗須だが、当初は苦肉の策として佐木に依頼したふしもあった。しかし栗須は佐木の騎乗にこだわり、佐木も栗須の熱意に動かされた。なぜ栗須は佐木を信じようと思ったのだろう?

 興味深い対比が第4話では描かれていた。JRAに所属する中央競馬のジョッキーは約150名。競馬学校を卒業し、試験に受からなければ騎手免許は与えられない。地方競馬は免許の種類が異なるため、地方所属の騎手が中央競馬で騎乗することはできず、転籍した例は数えるほどしかない。「同じジョッキーでも住む世界が異なっている」のが現実だ。佐木は地方競馬にプライドをもっており、広中が言うように「地方には地方の意地がある」。

 もうひとつは、今作のテーマに関わるものだ。佐木の因縁の相手でライバルとして立ちはだかるのが、二世ジョッキーの松井(大西利空)である。地方の厩舎出身と競馬界のプリンス、個性的な荒れ馬と大規模ファームが送り出した血統の良い優良馬。対照的な両者は、実力は血筋を上回るかという命題を提示する。血はDNAであり、持って生まれた資質を象徴している。

「なにが違うんですか。どこで生まれたって同じ人だし、馬は同じ馬ですよ」

 ため息をつく佐木に栗須が話したのがホープの来歴だった。実力はある。ただ、誰も信じようとしなかった。人も同じかもしれない。「どこで生まれたかは関係ない。良いものは良いんです」。実力で見極める栗須は、冷静に数字を追う税理士の思考も影響していると思われる。その上で人間を見ている。栗須は佐木と直接会い、暴行事件の真偽を確かめた。自ら足を運び、自分の目で確認したことが重要だ。

 もちろん、そこには話題づくりの計算もあって、ビジネスなので当然ではある。どん底を経験した栗須は血筋に惑わされなかったし、世評を鵜呑みにしなかった。そうした全てが作用し、栗須は佐木を信用したと考える。補足しておくと、佐木本人は血筋や生まれた場所を否定していない。自分を受け入れてくれた地元に恩義を感じてすらいる。その上で自らの足で立ち、実力で勝負することを選んだ。

 ロイヤルホープのデビュー戦となるレースは、騎手の視点をライブカメラでとらえており、回を追うごとに進化するレース映像を体感させるものだった。馬と呼吸を合わせて疾駆する高杉真宙の表情に引き込まれた。「スピードだけでは測れない闘争心と勝負強さ」は佐木とホープに共通しており、両者は出会うべくして出会ったといえる。ゲートで出遅れながら追い上げて優勝したロイヤルホープの走りは、府中の直線でライバルたちを差し切ったマスカレードボールを思わせるものだった。

 耕造が栗須という右腕を得て(第1話)、調教師を招いて競馬事業部を存続させ(第2話)、夢を託す若馬を“希望”と名づけた(第3話)。第4話では“人馬一体”の手綱を握る騎手が加わった。ドラマの舞台設定が整ったいま、夢の実現へ何が最後のピースになるだろうか。耕造の隠し子疑惑の帰趨や、栗須が病院ですれ違った中条耕一(目黒蓮)が物語の中心に躍り出るか注目だ。

『ザ・ロイヤルファミリー』の画像

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』

早見和真の同名小説をドラマ化。税理士としての挫折を味わい希望を見出せなくなってしまった主人公の人生が、馬主である山王耕造との出会いにより大きく動き出していく。

■放送情報
日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:妻夫木聡、目黒蓮、松本若菜、安藤政信、高杉真宙、津田健次郎、吉沢悠、木場勝己、尾美としのり、関水渚、長内映里香、秋山寛貴(ハナコ)、三浦綺羅、小泉孝太郎、黒木瞳、沢村一樹、佐藤浩市
原作:早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮文庫刊)
脚本:喜安浩平
演出:塚原あゆ子、松田礼人、府川亮介
主題歌:玉置浩二「ファンファーレ」
プロデュース:加藤章一
協力プロデュース:大河原美奈、小髙夏実
編成:佐藤礼子、中野翔貴
製作:TBSスパークル/TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/RoyalFamily_tbs/
公式X(旧Twitter):@royalfamily_tbs
公式Instagram:royalfamily_tbs
公式TikTok:@royalfamily_tbs

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