『ザ・ロイヤルファミリー』松本若菜が体現する生産牧場の現実 次回ついに目黒蓮登場へ

10月26日放送の『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)第3話では、1頭の馬をめぐって馬主と牧場経営者が熱弁を振るった。
ロイヤルイザーニャが2011年の中山で初勝利を飾り、新たなスタートを切った山王耕造(佐藤浩市)の“ロイヤルファミリー”。2012年、活躍が期待されたロイヤルファイトとロイヤルイザーニャがそろって故障し、耕造は新たな主力を求めて競走馬の購入を進める。
本作で耕造のライバルとして登場するのが椎名善弘(沢村一樹)だ。人材派遣最大手「ソリュー」社のCEOの椎名は、潤沢な資金で高価な新馬をせり落とす。資金力で劣る耕造は、椎名に何馬身も差をつけられている。耕造は、調教師の広中(安藤政信)が言う「まだ見ぬ有力馬を発掘する」方針に舵を切ることになった。
第3話では、競馬業界を支える北海道・日高の牧場の現状が描かれた。冒頭部分に続くナレーションで示されたように、サラブレッドの生産牧場は二極化が進み、全盛期の半数まで減少。劇中の北陵ファームのように、生産から育成を一括管理して圧倒的な成果を挙げる大規模ファームがある一方で、個人経営の牧場のほとんどは高齢化と後継者不足に悩んでおり、こうした事情が第3話の背景にある。後継者のいない林田(尾美としのり)の牧場は荒廃しており、ファームの現状を映していた。
栗須(妻夫木聡)の元恋人で、父と牧場を営む野崎加奈子(松本若菜)は、父の剛史(木場勝己)が育てる1億の馬の話をする。野崎ファームは、古き良き家族経営のファームとして取り上げられる。大規模ファームと個人経営の牧場、その中でも、廃業するファームとの違いが描かれる。
零細ファームは課題が山積している。初対面の耕造と剛史が互いに譲らず、激高してしまうシーンは、単なる昭和の頑固おやじの喧嘩にとどまらない。なぜ、剛史はこれほどまでに勝つことにこだわるのか? 馬をオークションに出さず、1億円という売値をつけて、馬主を選ぶ剛史は、はた目からは理不尽な人物に見えなくもない。けれども、そこに理由があることが徐々に明らかになる。
剛史は敗色が濃厚だ。交配によって駿馬を生み出すことは可能性の産物であり、運まかせのギャンブルの要素が強い。地元のスナックで、同業者が言う、見果てぬ夢を追いかけて生産農家が何軒もつぶれた、勝つことより生きることで、安くても売れる馬を作ればいい、という言い分はもっともである。しまいには、栗須が「都会から来て希望だけよこせって、言うだけなら簡単」と言われてしまう。
加奈子は、小規模ファームの現状と父親の板ばさみになっている。そこに日高でシングルマザーとして生きる人生の選択が重なって、悩みの色は濃くなる。自問自答する加奈子にとって、栗須と過ごす時間は、仕事や家庭の愚痴を聞いてもらえる、唯一の肩ひじを張らない時間なのだろう。松本若菜は、加奈子が何に葛藤し、どんなライフステージにいるかを理解した上で、共感できる等身大のキャラクターとして体現した。
夢と現実の落差は、競走馬の場合、残酷なほどはっきりしていて、勝利の高揚感と敗北の苦さは、リターンとして馬主と生産者を直撃する。そんな中で、競走馬の生産・育成に意味はあるのかという問いを、現場の人たちは常に抱きながら日々の仕事に向き合っているのだろう。剛史の言う「勝てる馬」は、耕造が目指すG1制覇と一致しており、周囲の反発をよそに己の信念を貫く姿も共通している。彼らがあらがっているのは時代の変化で、その間に挟まれて、夢は押しつぶされそうになっている。
だからこそ、新しい馬に“希望”と名づけたことが、何重にも意味合いを帯びてくる。なぜ勝利を目指すのか。剛史は、勝利を目指さなければ、何のために生きているかわからないと語る。それは人にとっても、馬にとってもそうだ。剛史は仲間の思いを背負っていて、その中には亡き妻も含まれていた。一人の勝利は全員の勝利で、夢の継承こそ日々の労苦と忍耐の理由だと知らせていた。先が見通せない暗闇で、希望は前に進むための力になる。
今作でナレーションを担当する目黒蓮について、相関図では「物語の鍵を握る重要な人物」として紹介されている。その正体について、早くからSNSで憶測が広がっている。約20年後の未来から回顧するストーリー構成から、加奈子の息子である翔平(三浦綺羅)の成長した姿、栗須の息子などの意見が飛び交う。第3話放送後の次回予告では、劇中で目黒の姿がとらえられており、どんな答えが出るか(出ないか)楽しみだ。
早見和真の同名小説をドラマ化。税理士としての挫折を味わい希望を見出せなくなってしまった主人公の人生が、馬主である山王耕造との出会いにより大きく動き出していく。
■放送情報
日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:妻夫木聡、目黒蓮、松本若菜、安藤政信、高杉真宙、津田健次郎、吉沢悠、木場勝己、尾美としのり、関水渚、長内映里香、秋山寛貴(ハナコ)、三浦綺羅、小泉孝太郎、黒木瞳、沢村一樹、佐藤浩市
第1話ゲスト:武豊、丸田恭介、菅原隆一、今村聖奈
原作:早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮文庫刊)
脚本:喜安浩平
演出:塚原あゆ子、松田礼人、府川亮介
主題歌:玉置浩二「ファンファーレ」
プロデュース:加藤章一
協力プロデュース:大河原美奈、小髙夏実
編成:佐藤礼子、中野翔貴
製作:TBSスパークル/TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/RoyalFamily_tbs/
公式X(旧Twitter):@royalfamily_tbs
公式Instagram:royalfamily_tbs
公式TikTok:@royalfamily_tbs






























