佐野晶哉×上白石萌歌が語る、声優経験の手応え 「自分の声に対する意識も変わりました」

Aぇ! groupの佐野晶哉と上白石萌歌が声優を務める、ミュージカルアニメーション映画『トリツカレ男』が11月7日に公開される。作家・いしいしんじによる同名小説を元に、何かに“とりつかれた”ように情熱を注ぐ青年ジュゼッペと、彼に出会い運命が変わってていく女の子ペチカの物語を描く本作。ともに幼少期から舞台や音楽に親しみ、俳優とアーティストの両面で活躍する2人にとって、歌と芝居が融合する本作はまさに新たな挑戦となった。
声優として初共演を果たした2人に、声優の経験が他の表現活動にどう影響したのか、そして2025年も残り2カ月を切った今、今年中に“達成したいこと”について聞いた。
上白石萌歌が驚いた佐野晶哉の声芝居

ーー初共演となるお2人ですが、最初に出会ったときの印象を教えてください。
佐野晶哉(以下、佐野):初めてお会いしたのは、僕の引っ越し直後くらいの頃でした。「家に家具が全然なくて」という話をしていたら、上白石さんが「うちのソファーはこういうのだよ」と教えてくれたり。すごく優しい人やなって(笑)。そのときの印象がずっと残っています。
上白石萌歌(以下、上白石):実は、収録日自体は1日しか被っていないんです。だから、今日こうして話している今がほぼ第一印象かもしれません(笑)。アフレコで印象的だったのは、ジュゼッペがいろんな言語を話すシーンの収録に立ち会ったとき、すらすらと淀みなく話していて、本当に努力家なんだなと感じました。そしてそれを見せない器用さもあって。裏ではきっとすごく準備していらっしゃるんだろうなと感動しました。お互い、幼い頃から舞台や音楽に携わってきたところも似ていて、初対面でも不思議と親近感がありました。

ーー原作『トリツカレ男』を初めて読んだときの印象は?
佐野:最初に思ったのは「ジュゼッペの声、むずかしそ〜!」(笑)。初めての声優仕事が『ヨウゼン』という作品の青年役だったんですが、今回はさらに声の幅が試される役でした。とりつかれるたびに違う“声”を出す。プロの声優さんでも難しい役だと思いました。でも「これができたら気持ちいいだろうな」とも感じました。
上白石:私はいしいしんじさんの作品がもともと好きで、今回初めてこの小説を読んだのですが、“混じり気のない純粋さ”があって、言葉が本当に美しいなと思いました。特に、ペチカのお母さんが言う「歌はこの世に朝が来るよ」というセリフが好きなんです。脚本と絵コンテを見たとき、原作の世界観がちゃんと息づいていて、アニメーションでどう描かれるのかすごく楽しみになりました。

ーーいしいしんじさんのファンでもある上白石さんから見た、佐野さん演じるジュゼッペの魅力は?
上白石:まず、私が原作を読んで想像していたジュゼッペの声そのもので、びっくりしました。しかも、ジュゼッペとペチカが初めて出会うシーンの収録は、私たち自身のリアルな初対面のタイミングでもあって。佐野さんのお芝居のおかげで、お互いの素直な感情を自然に乗せることができました。
ーー佐野さんはジュゼッペを演じる際、どんなことを意識しましたか?
佐野:『ヨウゼン』で初めて声優をやらせていただいた際に、津田健次郎さんに「難しかったら体を動かして演じたらいいよ」と言われたんです。だから今回も、りんごを投げるシーンでは実際にりんごを投げながら声を出したり、走るシーンでは体を動かしたりしてました。体を使うと自然と声のトーンも変わってくるんですよね。
“協力プレー”で生まれた外国語アフレコの裏側

ーー面白いですね。アフレコで特に苦労した場面は?
佐野:いろいろな言語を話すシーンが一番大変でした。ほんの30秒くらいの場面ですが、“トリツカレ男”ってゆうてるくらいだから(笑)。やっぱりネイティブの人が聞いても通じるレベルで話せるようにしなきゃいけないなと思っていました。その説得力を出すのが難しかったです。
ーー言語の練習はどのようにされたのでしょう?
佐野:それぞれの言語の先生とビデオ通話を繋いでいただいて、「その発音だと意味が変わっちゃうよ」とか、「その言い方だと友だち以上の方に伝えるときのニュアンスになっちゃうよ」と指摘を受けていました(笑)。映像の尺に合わせる必要もあったので、想定していた倍くらいの言葉を詰め込む感じで大変でした。
上白石:メキシコに住んでいた私の友人にスペイン語を教えてもらったり、中国語が話せる子にその場で連絡して発音を聞いてもらったりもあったよね?
佐野:ありました! ほんまに助かりました。

ーー上白石さんはこれまでも声優としてさまざまな作品に参加されていますが、本作のアフレコで特に難しさを感じた部分はありましたか?
上白石:声の芝居は何度やっても「難しいな」と感じます。実写のお芝居と使う筋肉が全然違うんです。しかも今回は“ミュージカルアニメーション”だったので、歌収録もありました。しかもその歌収録が、お芝居よりも先だったんです。まだキャラクター像がつかみきれていない段階で「この人はどんな声で歌うんだろう」と想像しながら歌うのは難しかったです。想像力をフルに働かせながら演じていました。




















