『ばけばけ』トミー・バストウに『SHOGUN』ファンも称賛　髙石あかりとの会話劇に期待

　NHK連続テレビ小説『ばけばけ』も第5週に突入。トキ（髙石あかり）は銀二郎（寛一郎）を東京から連れ帰ることは叶わず、家族が暮らす松江の地に戻ってきて4年の月日が経過していた。

　松野家は相変わらず借金を返せども返せども、貧乏暮らしからは抜け出せていない。トキもシジミ売りで生計を立てていたが、借金返済の目処は一向に立たず。一度離婚しているため、次の縁談も進まないままだ。

　そんな彼女に訪れる転機こそ、アメリカから外国人英語教師として松江に上陸することになるラフカダ・ヘブン（トミー・バストウ）との出会いだ。早速、第21話ではサワ（円井わん）とともに松江初の外国人を一目見ようと船着き場を訪れる様子が描かれる。

　ヘブンを演じるトミー・バストウは2024年エミー賞受賞ドラマ『SHOGUN 将軍』（ディズニープラス）にも出演し、日本語堪能なポルトガル人司祭・マルティン・アルヴィトを細部までこだわり演じていた。まだまだ日本に暮らす外国人が見慣れない時代において、完全には受け入れられていない居心地の悪さを感じる『SHOGUN 将軍』での役柄は『ばけばけ』でのヘブンにも通ずる部分がある。

　バストウは自身が演じるヘブンについて「ヘブンのモデルであるハーンさん（小泉八雲）は子供の頃に両親と疎遠になり、痛みを抱えながら、いつも居場所を探していた人です。（中略）彼の繊細さと冒険者なところが私自身との共通点です」（※）と答えている。特に朝ドラでは繊細な感情表現が必要とされる場面も多いなか、彼自身も日本の古い映画や文化に惹かれて10年間ほど日本語を学んでいるとのことから、髙石あかりとのチャーミングなやりとりや、ヘブンに翻弄されると噂の錦織を演じる吉沢亮とのコミカルな会話劇にも期待が膨らむ。

　第5週のタイトルは「ワタシ、ヘブン。マツエ、モ、ヘブン。」。小さい頃に両親から見放されて、親戚をたらい回しにされて育ったうえ、アメリカでも自身の居場所を見つけられなかったヘブンにとって、初めて訪れる日本は“天国（ヘブン）”のような場所に思えたのかもしれない。

　トキもまた、お得意様である花田旅館のツル（池谷のぶえ）に「やっぱし東京に残っとっちゃったらねぇ」と言われて複雑な感情が表情に入り混じる。未来への希望をなかなか見出せない生活を続ける彼女にとって、孤独を感じて異国からやってくるヘブンは、心の奥に押し込めている“寂しさ”や“恨めしさ”を分かち合ってくれる存在になるはずだ。

　船に乗るヘブンの姿を見て「天狗だ……」とこぼしていたトキ。理想の見合い相手に「怪談が好きなかた」「河童とか、天狗とか、小豆洗いとか」と答えていた彼女にとって、ヘブンは言葉の通じない異人などではなく、一度は話してみたい興味の惹かれる存在なのだろう。

　異なる文化圏に育ち、言葉も通じない2人をつなぐのは、トキが子どもの頃から大好きだった“怪談”。初回放送で映し出された夜な夜な怪談を語り合うへんてこな夫婦生活を観るに、“怪談”は彼らの心を通わせる安らぎの時間になるはずだ。オープニング映像で流れる川島小鳥が撮影した多幸感の溢れる写真のように、異国の地で出会った2人が何気ない日常に幸せを見出す瞬間が今から待ち遠しい。

　ただ、トキとヘブンの邂逅を目前にしても、2人の間にはまだまだ障壁が多い。銀二郎ともたびたび衝突していた勘右衛門（小日向文世）は、遊女のなみ（さとうほなみ）が「らしゃめん（羅紗緬：外国人の妾となった女性を指す蔑称）になりたい」と漏らしていたのを耳にすると、すぐさま駆けつけて「恥を知れ！　奴らは開国を迫り、武士の時代を終わらせた諸悪の根源」「らしゃめんなんぞになろうとは言語道断！」と一喝する。

　銀二郎との結婚生活が破綻してしまったのも、松野家の途方もない借金と勘右衛門らが引きずる武士のプライドが原因だった。アメリカからやってきたヘブンに対して、勘右衛門が物申すのも時間の問題だろう。

　どちらにせよバストウ演じるヘブンの登場が『ばけばけ』に一風変わった風を吹かせるのは間違いない。いずれは夫婦になる2人は初対面でどのような会話を交わすのか。予告映像を観る限り、ロマンチックな出会いとはいかなそうではあるが。

参照
※ https://realsound.jp/movie/2025/10/post-2199963.html

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00～8:15放送／毎週月曜～金曜12:45～13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30～7:45放送／毎週土曜8:15～9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30～7:45放送／毎週土曜10:15～11:30再放送
出演：髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作：ふじきみつ彦
音楽：牛尾憲輔
主題歌：ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括：橋爪國臣
プロデューサー：田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出：村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供＝NHK