『鬼滅の刃 無限城編』北米で日本映画史上No.1ヒット 「世界規模のブロックバスター大作」に

『鬼滅の刃 無限城編』北米で日本映画史上1位

 とうとう『鬼滅の刃』ブームがアメリカに上陸した。9月12日~14日の北米映画ランキングは、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が初登場No.1に輝いたのだ。

 本作は週末3日間で3500~4000万ドル、うまくいけば5000万ドル……という予想がなされていた中、オープニング興行収入7000万ドルというロケットスタートを記録。『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998年)を抜き、日本映画としての歴代記録を更新した。

 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、日本では言わずと知れた超人気シリーズの劇場版で、新たな3部作として製作される「無限城編」の第1弾。日本では東宝配給のもと7月18日に公開され、興行収入300億円を突破する大ヒットとなっている。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 北米配給はソニー・ピクチャーズ傘下のクランチロール。海外最大のアニメーション配信サービス「Crunchyroll」を保有し、配信のみならず、日本製作のアニメーション映画を多数公開してきた。過去には『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(2020年)や『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』(2023年)の配給も手がけている。

 特筆すべきは、週末興収7000万ドルという数字が、クランチロールのみならずソニー・ピクチャーズにとっても近年屈指の成績であることだ。『28年後...』(2025年)や『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(2024年)、『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(2024年)を超えて、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023年)の1億2066万ドルに次ぐ約2年ぶりの好記録となった。

 ソニー/クランチロールは、Crunchyroll上で『鬼滅の刃』を配信するだけでなく、過去に日本でも実施された劇場上映を再現する試みを継続してきた。今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』では、公開規模を過去作の2倍にあたる3315館に拡大し、ハリウッドのブロックバスター映画に匹敵するスケールで上映している。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 すなわち今回のヒットは、アメリカでも築き上げられてきた『鬼滅の刃』のファンベースのうえに、自社配信サービスの活用と、劇場公開をコンスタントに続ける取り組みを重ね、大規模公開という“打ち上げ花火”をうまく成功させた例なのだ。

 9月9日にはTCLチャイニーズ・シアターで北米プレミアを開催し、日本版で主人公の竈門炭治郎役を演じた花江夏樹も登場。英語版で慶蔵役を演じたチャニング・テイタムのほか声優陣も集まったほか、ハリウッドのスターやインフルエンサーも登場した。

 それでも、当初は『鬼滅の刃』ファンが興行の中心だと予想されていたため、これほどのヒットは想定されていなかったのだ。ところが公開翌日の土曜日にはファン以外の層が劇場に足を運んでいることが判明し、批評家・観客の口コミ効果も手伝って、より広い層を巻き込むムーブメントへと発展している。

 このような経緯と戦略を踏まえると、もはや本作は「日本のアニメ(anime)映画」ではなく、グローバルなアニメーション映画のひとつとして捉えるべきだろう。競争相手をそこまで広げても、本作はユニバーサル・ピクチャーズ製作の『ドッグマン』や『The Bad Guys 2(原題)』、ディズニー&ピクサー『星つなぎのエリオ』をも抜いて今年ぶっちぎりNo.1の成績なのだ。目下のライバルは『ズートピア2』と言っていい。

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