スピッツ、“アニソンバンド”としても国民的評価 『SPY×FAMILY』『コナン』での達成とは

スピッツ、“アニソン”でも国民的評価

 10月に放送がスタートした『SPY×FAMILY』Season 3のオープニング主題歌を、デビュー約35年のベテランバンド、スピッツが担当。同作のために書き下ろされた新曲「灯を護る」が、往年のスピッツファンはもちろん、スピッツ黄金期を知らない若い世代にも刺さっている。

スピッツ / 美しい鰭 Spitz / Beautiful Fin

 スピッツといえば、2023年に劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』主題歌として書き下ろされた楽曲「美しい鰭(ひれ)」が映画とともにヒットし、現在までに音楽ストリーミングで累計4億回を越える再生数を記録。シリアスでスリリングなハラハラどきどきのストーリー展開に、ユーモアあふれる言葉を交えた歌詞がコナンや灰原の強がりと重なるなど、作品に優しく寄り添いながら各シーンを後押しするような力強さで“コナン映画史上NO.1主題歌”と評された。それ以来およそ2年半ぶりとなるのが今回の楽曲で、SNSには「いい歌をありがとう」「スピッツらしい曲」「ずっとリピート再生してる」「懐かしい気持ちになる」「決して枯れない才能の泉」など様々な賞賛の声が上がっている。

 スピッツは1991年にシングル『ヒバリのこころ』とアルバム『スピッツ』でメジャーデビュー。パンクやUKなど80'sロックをルーツに、フォークやカントリーなどのアコースティックサウンドを交えた独自の音楽性、草野マサムネの温かな歌声、そしていくつになっても少年の瞳のままのような、無垢な歌詞表現が人気を集め、UNICORN、Mr.Children、THE YELLOW MONKEY、ウルフルズら同世代のバンドとともに平成のバンドシーンを牽引した。

 約35年のキャリアにおいて、数多くの楽曲がドラマや映画に起用され、時には主題歌も書き下ろしている。1996年に放送されたドラマ『白線流し』(フジテレビ系)の主題歌「空も飛べるはず」はその代表格。同ドラマでは「ロビンソン」や「Y」も挿入歌として使用された。「スターゲイザー」は、恋愛リアリティー番組の先駆けである『あいのり』(フジテレビ系)の主題歌として書き下ろされ、番組とともに社会現象になる広がりとなった。

スピッツ / ハチミツ

 またマンガ家・羽海野チカに影響を与え、彼女の代表作『ハチミツとクローバー』のタイトルが、スピッツのアルバム『ハチミツ』から付けられたという逸話は有名。2005年に同作がアニメ化された際は「ハチミツ」や「スピカ」などスピッツの多くの楽曲が挿入歌として使用された他、2006年に櫻井翔らの主演で実写映画化された際は、主題歌「魔法のコトバ」を書き下ろした。

 近年はNHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年度前期)の主題歌「優しいあの子」がヒット、2022年に放送され一大ブームを巻き起こしたドラマ『silent』(フジテレビ系)のヒロイン・青羽紬の好きなバンドとして、同ドラマの挿入歌に「魔法のコトバ」や「楓」などが使用されたことも記憶に新しい。

『SPY×FAMILY』Season 3を彩る「灯を護る」

スピッツ / 灯を護る Spitz / Protect the Light

 「灯を護る」は、「美しい鰭」と同様のミディアムサウンドであることなど共通項も多いが、大切なものを守るという芯はそのままに、直接的に“守る”イメージから、見守るような眼差しへと視点を変えた。

 スピッツの音楽は、不純物を極限まで取り除いて抽出された結晶だと言える。ベースの田村明浩とドラムスの﨑山龍男からなる堅牢なリズム隊。豪快さと兼ね備えた、三輪テツヤが奏でるギター。「灯を護る」は、カントリーやフォークロックをベースにした軽快なバンドサウンドを元に、ティンパニーの重厚感あふれるビートや爽快なブラス、そしてスピッツのヒットナンバー特有のキラキラとしたアルペジオが加えられ、そのどれもが意味を持ち、おもちゃ箱を開いたときのような高揚感と共に広大な景色が目の前に広がる。また、シンプルで口ずさみやすいキャッチーなメロディーラインに乗せた、草野マサムネの歌と言葉は、激動の世の中を憂いながら大事なものを“見護る”未来を見据えた眼差しが実に優しく温かい。

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