スピッツ、“アニソンバンド”としても国民的評価 『SPY×FAMILY』『コナン』での達成とは

スピッツ、“アニソン”でも国民的評価

 『SPY×FAMILY』Season 3は、「ロイド過去編」として、ロイド〈黄昏〉が幼少期に経験した、戦争体験やスパイになった経緯が描かれることでファンの間でも人気の高いエピソードだ。これまで何度も劇中に出てきた「子どもが泣かない世界を作るため」という、ロイド〈黄昏〉が胸に宿す信条の原点となる話であり、その導入となるのが同曲だ。

 公式サイトで草野は、「常にストーリーの根底に流れる『哀しみ』があり、そこから逃げない歌にしたいと思いました。しかも楽曲全体のベクトルが最終的には希望に向かっているような、そんな歌に。」とコメント(※)。同曲のタイトルにもある「灯」とは、もちろんアーニャを始めとした子どもたちのことで、歌詞では、ロイド〈黄昏〉の経験とそこから生まれた“平和への願い”が、子どもたちを“見護る”という視点で綴られている。スピッツのメンバーも2025年58歳で子を持つ親の世代であり、ロイド〈黄昏〉の信条には大いに共感したはず。そうしたリアリティーが、自然と絶大な説得力を生んでいる。

 また同曲とともに流れるオープニング映像は、子どもたちが草原を楽しそうに駆け回り、それぞれの大切な宝物を掲げる様子が胸を打つ。その中にはアーニャだけでなく、ロイド〈黄昏〉やヨルが子どもになった姿もあり、時代によってはロイド〈黄昏〉やヨルがこんなふうに駆け回った世界線があったかもしれないことが示唆され、であるならば、戦火にまみれて生きて来たロイド〈黄昏〉に与えられた幸せとは何だったのか。そのことは「灯を護る」の歌詞でも、問題提起されている。どんな大人にも子どもの時があり、幸せは平等にあるべきはずであることを思い知らされる楽曲。しかし力強く大地を踏みしめるようなビートと、風が背中を押すように爽快なギターサウンドが、諦めることを踏みとどまらせる。

 これまで時代を越えて、数多くのタイアップに起用されてきたスピッツの楽曲。それは彼らが生み出す音楽が普遍的であるからで、そこには聴き手の想像力やクリエイティブを差し挟む余白が生まれる。多くの映像作品に起用されてきた理由も、きっとそこにあるだろう。「美しい鰭」や今回の「灯を護る」に込められたテーマ性やメッセージは実に明快でありながら、そこにどう余白を生み出し、音や歌として紡ぎ出すかはバンドのセンスに他ならない。30年以上にわたって研鑽され続け、ますます磨きのかかったスピッツの音楽。そのシンプルであるがゆえの深みが、今という時代に呼ばれている。

参照
※ https://spy-family.net/tvseries/music/music_op_season3.php

■放送情報
TVアニメ『SPY×FAMILY』Season3
テレビ東京系にて、毎週土曜23:00〜放送
各プラットフォームにて、Season1~Season2配信中
キャスト:江口拓也(ロイド・フォージャー役)、種﨑敦美(アーニャ・フォージャー役)、早見沙織(ヨル・フォージャー役)、松田健一郎(ボンド・フォージャー役)、吉野裕行(フランキー・フランクリン役)、甲斐田裕子(シルヴィア・シャーウッド役)、山路和弘(ヘンリー・ヘンダーソン役)、小野賢章(ユーリ・ブライア役)、藤原夏海(ダミアン・デズモンド役)、加藤英美里(ベッキー・ブラックベル役)、佐倉綾音(フィオナ・フロスト役)
原作:遠藤達哉(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:今井友紀子
シリーズ構成:山崎莉乃
キャラクターデザイン・総作画監督:嶋田和晃
色彩設計:原恭子
美術設定:竹内柚紀(草薙)、杉本智美(Unstable)
美術監督:臼井みなみ
CG監督:渡邉啓太(サブリメイション)
撮影監督:佐久間悠也
編集:小口理菜(IMAGICA)
音楽プロデュース:(K)NoW_NAME
音響監督:はたしょう二
音響効果:出雲範子
制作:WIT STUDIO×CloverWorks
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会
公式サイト:https://spy-family.net/
公式X(旧Twitter):https://x.com/spyfamily_anime
公式LINE:https://lin.ee/evp4YiJ
公式Instagram:https://www.instagram.com/spy_family_official/
公式YouTube:https://www.youtube.com/@TOHOanimation

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