『ファイナル・デッドブラッド』なぜシリーズ最大のヒットに? “死の描写”のリアリティ

予知によって大惨事から逃れた人々が、“死の運命”に襲われ次々と連鎖的な事故で命を狙われるホラー、『ファイナル・デスティネーション』シリーズ。日常の罠を創造的なゴア表現で描いたエクストリームなシーンの数々が、とくに若年層を中心に支持され、ヒットを続けてきた。
2000年より始まったシリーズは、コンスタントに続編が作られていたが、5作目『ファイナル・デッドブリッジ』(2011年)で、その製作はストップしていた。今回公開された6作目の『ファイナル・デッドブラッド』は、およそ14年ぶりの新作である。だが、その条件が需要を高めたといえよう。近年のホラーブーム、インターネットを効果的に利用した宣伝の成功もあり、予想を超えた爆発的な支持を受け、シリーズ最大のヒットとなったのだ。
本作『ファイナル・デッドブラッド』は当初、日本では公開が見送られるはずだった。しかし世界的な大ヒットの状況と、日本公開を待望していたファンの声を受け、一部劇場での緊急公開に至ったのは、足を運べる環境にある映画ファン、ホラーファンにとっては喜ばしいことだ。日本でもホラーブームの最中とはいえ、近年は過激なゴア描写のあるホラージャンルの配給は、観客を選ぶとして敬遠されたり、ジャンルを限定しない宣伝がおこなわれることも少なくない。この度、R18+指定として本作が公開されたことで、一部劇場に観客が殺到している状況が生まれているのも興味深い。
ここでは、そんな本作『ファイナル・デッドブラッド』の内容を追いながら、なぜ本作がシリーズ中でも高い完成度へと到達し、多くの観客の心に響くことになったのかを考えていきたい。
これまでも、大きな事故などによる大量死を防いだことで、遅れて発動する“死の運命”から逃れようとする人々の奮闘が、シリーズでは描かれてきた。それは惨殺者が具体的なかたちで襲いかかる『悪魔のいけにえ』(1974年)や『13日の金曜日』シリーズなどに代表される、次々に若者たちが殺されていくスリルや流血を描くジャンルの変奏であり、一種の発明だったといえよう。
本作の物語の起点となるのは、「スカイビュー」と呼ばれる、劇中の世界にだけ登場する架空の細長い高層タワー。シアトルの「スペースニードル」を想起させる形状で、同様に円形の展望台がレストランとして利用される。1960年代の終わりに開業した当日、そのタワーは炎上、崩壊し、大勢の利用客が落下するなどして死亡する運命が劇中で描かれる。恋人とともにタワーを訪れたアイリス(ブレック・バッシンジャー)は、死から逃れようと奔走する。
舞台は、現代に移る。ステファニー(ケイトリン・サンタ・フアナ)は、そんな「スカイビュー」での惨劇の情景を、アイリスの視点から頻繁に夢に見ることで、大学生活もままならない状況に陥っている。彼女が見た光景は現実に起こったものではなかったが、じつはこの運命は、母方の祖母アイリスによって“回避された”ものだったと、彼女は知ることになるのだ。そして“死の運命”が、血筋を辿って自分や家族、親族に迫ってきている状況を理解し、命を奪われないよう尽力するのだった。






















