『E.T.』が築いた現代エンタメの“礎“ 1980年代のカルチャーに与えた多大な影響とは?

『E.T.』が築いた現代エンタメの“礎“

 スティーヴン・スピルバーグ監督の傑作SFファンタジー映画『E.T.』が、10月10日の日本テレビ系『金曜ロードショー』で放送される。

 1982年の公開から40年以上が経った今も『E.T.』は色褪せない輝きを放っている。少年エリオットと地球に取り残された異星人(E.T.)との感動的な友情の物語。ジョン・ウィリアムズ作曲のメインテーマ曲のイントロを聞いただけで名シーンの数々が頭に浮かんでくる人も多いはずだ。筆者はかつてユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にあった『E.T.アドベンチャー』(2009年に終了)で、つい涙しそうになったことを今でも思い出す。

 ここでは『E.T.』は、普遍的なテーマ、革新的な映像表現、そして巧みな1980年代カルチャーの引用で豊かな世界観を作り上げ、現代のエンターテインメントの礎となった名作であることを探ってみたい。

『E.T.』©1982 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

「地球外生命体は本当にいるのか!?」

 本作が公開された1980年代ごろは特別な時代だった。天文学者カール・セーガン博士のTVシリーズ『コスモス』(1980年)が世界的な大ヒットを記録し、多くの人々がSETI(地球外知的生命体探査)に夢とロマンを馳せていた。未知なる宇宙への憧憬が最高潮に達していた。映画、ドラマ、アニメも宇宙をテーマにしたものが量産されていた。例えば、映画『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977年)もそうだし、日本で『宇宙戦艦ヤマト』が劇場公開されたのも1977年である。

 そんな世界の空気感をスティーヴン・スピルバーグ監督は、まず、『未知との遭遇』(1977年)で壮大なスケールの人類と知的生命体のファーストコンタクトとして形にした。そして『E.T.』では宇宙への憧憬を、少年と異星人(E.T.)の普遍のテーマを持つ物語へと見事に昇華させている。

『E.T.』©1982 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

 『E.T.』の功績の一つは「社会から少し孤立した少年少女が、人間ではない異質な存在と出会い、種族や言葉の壁を超えて友情を育む」という物語の型を、世界中の観客の心に深く刻みつけたことだろう。父の不在という寂しさを抱えるエリオット。故郷から遠く離れ孤独な異星人(E.T.)。二人が出会い、互いの欠けた部分を埋め合わせるように心を通わせていく姿は、観る者の心を強く揺さぶった。

 この物語のフォーマットは、人々に愛され、様々な形で受け継がれていく。少年とロボットの友情を描いたアニメーション映画『アイアン・ジャイアント』(1999年)。ハワイの少女と遺伝子実験で生まれた怪物の交流を描くディズニーの『リロ・アンド・スティッチ』(2002年)など影響を感じ取れる作品は多い。

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