『ジュラシック・パーク』が“不朽の名作”たる理由 画期的なCG技術と確かなテーマ性を紐解く

『ジュラシック・パーク』が傑作である理由

 ユニバーサル・ピクチャーズの人気シリーズにして、スティーヴン・スピルバーグの映画製作会社アンブリン・エンターテインメントの代表作でもある、『ジュラシック・パーク』シリーズは、2025年8月8日公開の『ジュラシック・ワールド/復活の大地』で通算7作目となる。最新作公開を記念して、スピルバーグが自ら監督したシリーズ第1作『ジュラシック・パーク』(1993年)を振り返ってみよう。

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スティーブン・スピルバーグ監督作『ジュラシック・パーク』が、7月25日の日本テレビ系『金曜ロードショー』にて放送されることが決定…

 本物の恐竜が生息するテーマパークが舞台となるだけに、製作にあたって恐竜たちをどのように描写するかが課題だった。スピルバーグはILM(ジョージ・ルーカスが設立した視覚効果スタジオ)にCGI制作を依頼し、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(1984年)や『インナースペース』(1987年)などアンブリン製作の映画でアカデミー視覚効果賞を受賞していたILM所属のデニス・ミューレンがCG部署の監督を務めた。

 それとは別にフルスケールモデルの動く恐竜も作ることになり、特殊メイクアーティストのスタン・ウィンストンが起用された。ウィンストンは、コンピュータ制御で動くロボット仕掛けの生物“アニマトロニクス”も得意分野で、『エイリアン2』(1986年)のクライマックスに登場する巨大なエイリアン・クイーンもウィンストンの仕事のひとつだ。『ジュラシック・パーク』の映画後半で、建物内に侵入してくる肉食の小型恐竜ヴェロキラプトルは、ウィンストンが制作した実物大のスーツとCGIモデルが併用されており、人間とヴェロキラプトルが同じ画面に収まるカットでは実物モデルが恐怖感を上手く演出している。豪雨の中で主人公たちを襲うT・レックス(ティラノサウルス)も実物大の造型物が用いられ、対峙する俳優たちの演技も迫真だ。

 ソフトウェアとCG技術の目覚ましい発展によって、2020年代の今なら、どんなものでもスクリーン上に作ることが出来る。そこそこ低予算な映画でも、割と見栄えがする作品に仕上げられるのも、時代と共に発展してきたデジタル技術の賜物といえるだろう。ましてや大作の『モンスター・ヴァース』シリーズにおけるゴジラやコング、派手な視覚効果と超能力バトルが売り物のマーベルヒーロー作品など、架空のキャラクターの戦いを見過ぎた我々はもうCGIで作られた映像に慣れてしまっている。しかし1993年当時に、それまでのストップモーションアニメで表現した怪物のようなカクカクした動きではない、リアルな恐竜を動かした『ジュラシック・パーク』は全世界の観客を驚かせるに足る画期的な映画だった。

 『ジュラシック・パーク』は最初の公開時に全世界で9億7千万ドル(2025年の紙幣価値で約1,445億円強)もの興行収入をあげた。これは1997年の『タイタニック』に追い抜かれるまで、世界最高の興行収入を記録した映画で、まさに「誰も観たことがない映像」だったのだ。この当時のビデオ市場で、洋画のセルビデオの一般的な価格帯が平均14,800円だったのに対し、初めてビデオグラム化された『ジュラシック・パーク』のVHSソフトは20,000円という高価格だった。この強気な定価でも売れる映画と思われたのだろう。同作のDVDが1,000円台で買える現代からすると、嘘のような値段だ。

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