『E.T.』はなぜ全世界を熱狂させたのか 今こそ観てほしい、CGではない“そこにいる”E.T.

『E.T.』はなぜ全世界を熱狂させたのか

 昨今では劇場公開された新作映画は、わずか数カ月後にはBlu-ray&DVD化されるし、場合によってはソフト化よりも早く配信サイトで観られるようになる。早期の配信プラットフォームでの解禁は、じっくり自宅で楽しみたい映画ファンにとって実に嬉しいサービスである。が、しかし、全国の映画館で大ヒットした話題作にもかかわらず、ビデオソフト化まで6年間も待たされたという映画がかつてあった。それがスティーヴン・スピルバーグ監督のSFファンタジー映画『E.T.』だ。今や洋画のクラシックになっているので、あまりに有名過ぎて逆に観たことがない、という人も多かろうと思う。

 映画『E.T.』の導入部は至ってシンプルだ。地球の植物を調査するために、異星人の宇宙船が森の中に降り立つ。その宇宙船から地上に出た1体が急なトラブルによって地球に置き去りにされてしまう。10歳の少年エリオットは、自宅の物置小屋や近隣の畑で動く怪しい影の正体を突き止めようとして、この宇宙人に出会うこととなる。エリオットは彼に、地球外生命体を表わすExtra-Terrestrial(エキストラ・テレストリアル)を縮めたE.T.と名付け、大人に見つからないよう自宅の部屋に匿うのだが……。ここからこの2人がどんな出来事に遭遇するのかは実際に本編を観ていただくとして、この映画が製作に至った背景を振り返ってみよう。

 スピルバーグは1977年にSF映画『未知との遭遇』を監督した(日本公開は1978年)。この映画は宇宙人と地球人の直接的な遭遇を扱った作品だ。アメリカのインディアナ州に現れた巨大なマザーシップが音と光を使って地球人とコンタクトを試みるなど、宇宙船に乗る宇宙人たちを友好的な目線で描いている。孤独な子ども時代、宇宙に想いを馳せていたスピルバーグは再編集を施した『未知との遭遇 特別編』(1980年)を作るほど本作を気に入っており、これに続く宇宙人と人間の交流をテーマにした企画を温めていた。その構想がさまざまな変化を経て結実したのが、1982年公開の『E.T.』というわけだ。『未知との遭遇』で物語を動かして行くのは大人の男性だが、『E.T.』では10歳の男の子とその兄妹、友達といった子どもが中心という変化がある。そして子どもたちの冒険、サスペンス、別れといった起伏にとんだ数々のドラマや心温まるジュヴナイル要素が世界中の観客の感動を呼んだのである。中でもE.T.を連れたエリオットたちが、追って来る大人を出し抜いてまんまと逃げきる場面の小気味よさは、同世代の子たちなら画面に向かって応援したくなるほどテンポの良い演出だ。

 製作費が約1,000万ドルというハリウッド映画の中では小規模なバジェットで作られた『E.T.』は、全米だけでも3億ドルの興行収入を挙げて、同年の映画興行収入ランキング1位に輝いた。また、全世界で6億ドルを超える興行収入の新記録を打ち立て、『ジュラシック・パーク』(1993年)の9億ドルに追い抜かれるまでの10年間、その地位を守ったのだ。スピルバーグは本作を「何度も映画館で楽しんでほしい作品」として、なかなかビデオ化権を許可しなかった。ようやくビデオソフトになったのが1988年のことだ。マイナー故にソフト化されなかったのならまだしも、全世界で大ヒットした映画でありながらパッケージ化まで6年もかかったとは、PCやタブレットで気軽に映画に接する今の若い映画ファンからすれば気が長すぎて信じられない話だ。



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