『大きな玉ねぎの下で』運命の交錯映すメイキングは必見 神尾楓珠×桜田ひよりが託した思い

会うと面と向かって言えないけれど、文字にすると伝わることがある。9月10日にBlu-ray&DVDが発売された映画『大きな玉ねぎの下で』は、距離と時間を隔てたコミュニケーションの尊さを描いた秀作だ。豪華版には、メイキング、イベント集、予告映像集が収録された特典DVDとオリジナルブックレットが封入される。
今作は、爆風スランプの代表曲「大きな玉ねぎの下で」にインスパイアされた作品だ。同曲はいわゆる失恋ソングだが、歌詞は、日本武道館でのライブの日に待ち合わせた文通相手が来なかった傷心の思いを綴っており、ノスタルジックな風情が郷愁を誘う名曲である。映画では、オリジナルバージョンに加えて、シンガーのasmi演じるA-riの歌うカバーが展開上重要な役割を果たしている。
ダブル主演を務めたのは神尾楓珠と桜田ひより。神尾は大学生の丈流、桜田は看護学生の美優を演じる。夜はバー、昼はカフェになる「Double」でアルバイトをする2人は、互いの存在を知らない。丈流と美優を結ぶのは連絡用の管理ノートのみ。文字で悩みや趣味を共有するうちに、次第に打ち解けていく丈流と美優だったが……。
今作のテーマを劇中の台詞で表すと「同じ場所にいるんだけど、会ったことがない人」になるだろうか。実は、丈流と美優は顔を合わせたことがあるのだが、初対面の印象は最悪で、その後も二人の間には険悪な空気が流れる。メイキングに収録されたクランクインの映像は、神尾と桜田がすれ違うシーンではじまる。互いを連絡ノートの相手と知らない丈流と美優の「出会っているけど、まだ知らない状態」の感触を、神尾と桜田が、この時点で共有していることが伝わってきた。
インタビューで、桜田は神尾に対して「役の魅力を引き出せる素晴らしい俳優さん」と称賛し、神尾も桜田に「カメラが回っていないところからコミュニケーションを取ってくれて助かった」と感謝する。丈流と美優が心を通わせるツールの連絡ノートは、神尾と桜田の直筆。信頼関係をベースに、細部まで丁寧に作品の世界観を作り上げた。
メイキングの見どころのひとつが、丈流と美優が交互にノートを書くシーンの撮影。Double店内を模したセットに円形レールを設置し、360度のノーカット撮影を行った。昼夜のシーンは、丈流と美優のモノローグも同時に収録している。映り込みを避けるために神尾が見せた渾身の努力は、ぜひ特典映像でご覧いただきたい。






















