『エイリアン:アース』の真髄だった“人間とは何か”という問題提起 シーズン2への期待も

『エイリアン:アース』S2に期待のラスト

カーシュが全ての黒幕だった?

 まだ完全に明かされていないことや決着が着いていないこともある。その一つとして挙げられるのが、カーシュの思惑だ。本作で起きた悲劇は、カヴァリエが指示したマジノ号でのスパイ活動からはじまったが、それも含めて全ての事件の黒幕にカーシュがいるように感じる。カヴァリエはずっと自分より高い知能の存在と会話することを望んできた。そのために生み出されたと言っても過言ではないハイブリッドだが、彼らが生まれる“前”は誰と対話していたのか考えてみると、カーシュの顔が脳裏をよぎる。相談役であるアトム(エイドリアン・エドモンドソン)はゼノモーフの研究への懸念を示していたことから、なんとなくカーシュの入れ知恵だったのではないかと邪推してしまうのだ。

 カーシュが本シリーズでずっと行ってきたことが「監視」と「管理」なのも興味深い。マジノ号の墜落後に地球外生命体の収容と研究の監督、それ以外でもロスト・ボーイズたちの管理を任される。特にウェンディに関しては第1話の時から、彼女に“人間のふり”をやめさせようとする(人間性を捨てさせる)ような意図を感じる動きが目立った。実際、彼の思惑通りにウェンディはどんどん人間離れしていく。余談ではあるが、第3話でアトムがハーミットに対し「彼女は人間じゃない、もう違う」と言った言葉が、最終話でアトム“も”人間ではなかったことが明かされた今、聞こえ方が変わってくるのがすごい。どんな気持ちで言ったのか。そんなふうに感情さえないかもしれないシンセの感情を探ってしまう。彼らを通して描かれた「人間とは何か」という問題提起が、『エイリアン:アース』の真髄にあったように感じる。

 そして『エイリアン』シリーズはいつだって、権力を掌握していると勘違いしている人間たちが実際にはそうでないことを映す物語でもある。これはシリーズの生みの親であるリドリー・スコット監督が人工知能をテーマに、映画を通してその哲学に取り組む姿勢を貫いてきたことが影響している。カーシュの存在がどこか『プロメテウス』や『エイリアン:コヴェナント』のデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)を彷彿とさせる点も見逃せない。

 第7話ではスライトリー(アダーシュ・ゴーラヴ)とスミーがアーサー(デヴィッド・リズダール)を運ぶ場面に“偶然”でくわし、彼らを浜辺へと誘導した。しかし、第7話の冒頭をよく見返してみると、研究所の開閉の場面で彼はタブレット端末を操作しているのだ。いつも彼はタブレットを操作していたが、部屋のロックも“その端末によって操作”されていたことが強調される。つまり、アイザック(キット・ヤング)が閉じ込められた時も、アーサーが閉じ込められた時も、彼はそれを見ていて開けなかったのだ。もちろん、モローやユタニ社の侵攻もわかった上で、あえて何もしなかった。むしろ、カオスを起こさせた行為そのものの思惑は本人の口から語られていないため不明瞭だが、何となく全権を握っていると勘違いしている人間(カヴァリエ)に対してただ中指を立てているような行動だったのかもしれない。その辺りの真意も、いつか明確になるのだろうか?

T.オセルスの今後

 さて、もう一つ見逃せないのが、“目玉モンスター”ことT.オセルスの行方だ。ハーミットが哀れな宿主に選ばれたものの、危機一髪で回避し、T.オセルスは研究所から姿をくらませた。物語のラストで、彼がビーチに取り残されていたアーサーの死体に寄生し、そのまま立ち上がって歩き出す場面が描かれる。知能の高い地球外生命体として、カーシュのようにその思惑(ゼノモーフや人間への感情、立場)が明かされなかった存在として今後どのように物語に関わってくるのか、非常に気になるところだ。

 加えて、ユタニ(サンドラ・イ・センシンダイバー)も島に向かっている。いくつもの勢力の睨み合いが続いた状態で幕を閉じた『エイリアン:アース』シーズン1。今後の展開にも大いに注目だ。

■配信情報
『エイリアン:アース』
ディズニープラス スターにて独占配信中
出演:シドニー・チャンドラー、アレックス・ロウザー、ティモシー・オリファント、エッシー・デイヴィス、サミュエル・ブレンキン、バボー・シーセイ、デヴィッド・リズダール、エイドリアン・エドモンドソン、アダーシュ・ゴーラヴ、ジョナサン・アジャイ、イラーナ・ジェームズ、リリー・ニューマーク、ディエム・カミラ、モー・バーエル
クリエイター:ノア・ホーリー
製作総指揮:リドリー・スコット、デイビッド・ツッカー、ジョセフ・イベルティ、ダナ・ゴンザレス、クレイトン・クルーガー
©2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

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