『ポケモンコンシェルジュ』新エピソードに表れた変化 “上昇の物語”から“充足の物語”へ

Netflix配信のアニメシリーズ『ポケモンコンシェルジュ』は、ポケモンのための離島の施設「ポケモンリゾート」を舞台に、都会から来た主人公ハル(のん)が新人「ポケモンのコンシェルジュ(お世話係)」として日々を過ごす物語が描かれる作品だ。そんな本シリーズ『ポケモンコンシェルジュ』に、新エピソード4本が追加された。
ここでは、本シリーズ第5〜8話の内容を追っていきながら、ハルの立ち位置がどのように変わったのか、そして、彼女の変化が示すものが何なのかを考えてみたい。
本シリーズが特徴的なのは、人形を少しずつ動かしながら一コマごとに撮影する「ストップモーション・アニメーション」という手法が取られているということ。イギリスの『ひつじのショーン』シリーズや、日本のアニメシリーズ『PUI PUI モルカー』などのストップモーション・アニメーションが、日本の多くの視聴者に親しまれている。アニメ業界で主流の3DCGやデジタル作画に比べ、あたたかみのある作風となるのが特徴だ。
制作スタジオは、NHKのマスコット「どーもくん」のアニメや、「ゼスプリ キウイ」CM、Netflixシリーズ『リラックマとカオルさん』などで知られるドワーフスタジオ。株式会社ポケモンとの綿密な擦り合わせがおこなわれ、いろいろなタイプのポケモンに合わせて人形の材料を変えるという、本シリーズならではのこだわりが、今回反映された。
ポケモンリゾートでは、熾烈なバトルも劇的な冒険もない。ポケモンたちはリラックスしてめいめいに休日を楽しむのだ。ハルは島を訪れるポケモンや人々の困りごとに寄り添い、ときに失敗しながらも解決し、静かで温かい日常を繰り返していく。そして、現代の働く女性の日常の癒しを題材としていた『リラックマとカオルさん』と同様の表現で、同様の層を対象に“癒し”を提供するのだ。
既存のエピソード(第1〜4話)は、新米コンシェルジュとしてのハルが描かれていた。都会での仕事に疲弊し、島に移り住んだ彼女は、おっちょこちょいながらもポケモンと真剣に向き合う姿勢によって、先輩のアリサ(ファイルーズあい)やタイラ(奥野瑛太)、上司のワタナベ(竹村叔子)から認められ、コダックとも相棒といえる関係を築いていく。その点では、仕事を通して自分の居場所を見つけていく成長譚だったといえる。
新たに配信された第5〜8話では、物語のトーンがやや変わっている。新人の奮闘記を卒業し、すでになくてはならない一員として働くハルが描かれているのだ。第5話「ポケモンの手も借りたい!」では、他のスタッフが不在となり、ハルが一人で業務をこなす羽目になる。電気タイプのレントラーやコリンクが騒ぎを起こし、ベビーシッターのように右往左往するハル。しかし最終的に、ポケモンたちの力を借りることで解決に至る。ここでは、ハルが自分の特性を利用しながら役割を果たせる存在に成長していることが示されている。
第6話「一番のしあわせって」では、仲間の一人、タイラの親戚でベテランの船乗りであるダン(山路和弘)が登場。進化して大きく成長したトドグラーを連れて島を訪れる。手狭な自宅では世話しきれないと悩む彼は、ポケモンの幸せを思うがゆえに島に置いていこうとする。ハルはその判断に疑問を投げかけ、「本当に幸せかどうか」を問い直していく。ポケモンの立場になって、ものごとを繊細に考えることのできる彼女だからこその発想だ。
新たなエピソードでは、このように、ハルがどのように島の暮らしや仕事に馴染んでいくかではなく、一定の順応を果たした上で、ハルがポケモンや人々のために何ができるか、というフェーズに移行しているといえるだろう。以前のエピソードの配信から、2年弱。ハルの頼もしさと一段高くなった課題は、新人がちょうどそのくらいの時間を経て実力を発揮し始めるようになった局面だと考えられるのではないだろうか。






















