のん「現実に目を向けられるきっかけになれば」 『この世界の片隅に』終戦80年上映に寄せて

2016年に公開され、国内外で高い評価を受けた片渕須直監督のアニメーション映画『この世界の片隅に』。終戦80年を迎える2025年の夏、期間限定で再上映が行われている。劇場公開から9年、当時から世界が大きく変わったいま、主人公・すずの声を演じたのんは何を思うのか。改めてこの作品と向き合った思いから、この9年間の自身の変化についても語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
「映画を観た時間の中だけで完結するべきではない」
ーー再上映という形で、あらためて『この世界の片隅に』が劇場で観られることになりました。のんさんにはどんな思いがありますか?
のん:戦後80年という大きな区切りの年に『この世界の片隅に』が再上映されるというのは、すごく嬉しいことです。この作品は、私にとってもそうですし、たくさんの人にとって大切な映画になっていると思うので、こうして何度も劇場で観てもらえる機会があることが本当にありがたいです。あらためて「私がすずさんの声をやらせてもらえたんだな」と実感しています。久しぶりの上映ということで、ちょっとした緊張感もありますが、私自身もまた劇場に観に行きたいと思っています。
ーー再上映にあたって、片渕須直監督とは何かお話をされましたか?
のん:監督がおっしゃっていたのは、5年前までの舞台挨拶では、一度観ただけではわからないような部分の答え合わせというか、細かいところを観客のみなさんに知ってもらえる機会にしたかった、ということでした。ただ今回は、答えがない部分を観客のみなさんに自ら見つけてほしい、ということをおっしゃっていました。私はその監督の思いを聞いて、これは映画を観た時間の中だけで完結するべきではない、と思ったんです。
ーーというと?
のん:この映画はフィクションではあるんですけど、「すごく素敵な映画だった」「すずさんがかわいそうだった」というような映画への純粋なリアクションだけではなくて、それ以外の時間でも、映画で描かれているメッセージが伝わっていかないといけないなと思ったんです。戦争に巻き込まれてしまった人たちがいて、そういう状況の中でもどうにか生きていかなければいけない……その想像を絶するような大変さは、私自身も当時からものすごく考えていました。一方で、すずさんが美味しいものを食べたり、デートのためにおめかししたりドキドキしたりという、いまの私たちもにも通ずるような日常が描かれているので、当時といまを比較することもできるわけで。この時代に思いを巡らせることによって、「いま自分が大事にしなければいけないものってなんだろう」というところに立ち返る必要があると思いました。






















