『サユリ』『THE HAND』『ヒロシの心霊キャンプ』 怖さで残暑を吹き飛ばす必見ホラー3作

『THE HAND 恐怖のお手洗い』
『サユリ』で相当にHPを消費したことと思うが、続いて紹介する『THE HAND 恐怖のお手洗い』は、58分のワンシチュエーションホラーだ。サクッと観てほしい。
舞台は、韓国の高そうなマンションのやたら広いユニットバス付きトイレである。ある日、その部屋の住人が酔って帰宅すると、便座から腐った人間の手が生えていた。妻や駆けつけた警備員や救急隊員らを巻き込んでの、顛末を描く。

ホラーの巻き込まれ型主人公といえば、絶叫し、怯え逃げまどうのが定番である。そこから勇気を振り絞って、逆襲に転じるパターンもアリだ。だが本作の主人公は、一切怖がらない。便座から突き出た手を見ても、「ああ、手だね」って感じで、眉ひとつ動かさない。感情がないのかと、観てるこちらが心配になる。日本でリメイクするなら、ぜひ松田龍平にお願いしたい。UQ mobileのCMみたいなテンションで頼む。
本作は58分しかないため、さぞやソリッドに無駄を省いた構成だと思うだろう。実は、非常に無駄が多い。駆けつけた救急隊員が、手を見て気絶した若い妻を見て、「その女性はお前の嫁か?」と聞く。「母さんです」と答える主人公。驚く救急隊員。「冗談です。妻です」と訂正する主人公。もちろん終始無表情。そのくだり、いる?

他にも、化け物に効くのではないかと思われる漂白剤を投げ渡す際も、無駄にスローモーションになり、無駄にいいBGMが流れ、無駄にエモくなる。ただ漂白剤を渡すだけのシーンである。エモい要素は1mmもない。だが、この無駄な演出がだんだんクセになる。
本来の本作は、謎の手に掴まれた人間がどんどんゾンビ化していくという、パニックホラーである。だが鑑賞後に思い出すのは、主人公のシュールな無表情と、無駄が多い演出だ。それらを思い出しながら、自然とにやけている自分に気づく。おそらく、監督の術中にハマってしまった。くやしい。
『ヒロシの心霊キャンプ』

最後に紹介する本作は、2024年にBS日テレで放送されていたドラマ『ヒロシの心霊キャンプ』である。近年ではソロキャンプYouTuberとしての印象が強い芸人・ヒロシが、山の中で心霊体験をした人々をキャンプに招き、そのお話を聞くというのが、番組の趣旨だ。
公式サイトには、「主演・ヒロシ×キャンプ飯×山の怪談」との文言が踊る。文言通り、冒頭から野外で手際よく野菜を切る手元が映し出される。「さすがソロキャンパー・ヒロシ。料理も得意なんだな」と感心していたら、作っているのはベアーズ島田キャンプ(元・芸人、現・野外料理研究家)であった。「ヒロシちゃうんかい」と、小声でツッコミつつ観ていると、どうやら作っているのはカレーのようだ。美味しそうだが、炒めた野菜にたらしたトマトピューレの赤が血の色に見えて、一気に不穏になる。

キャンプファイヤーを囲んでの怪談話は、再現ドラマとして観せられる。そのドラマがしっかりと怖い。ヒロシは、『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)のタモリのような冷静なストーリーテラーかと思っていたら、ただの怪談を聞かされて怯えている人だった。「そのときの写真見ます?」と言われても、「いやいや、見せなくていいです!」と本気で拒否する。そしてほんとに見ない。「いやそこは見せろよ」と、また小声でツッコむことになる。
今なら、YouTubeで第1話を無料配信している。怖くて美味しいという珍しいドラマだ。おすすめしたい。
以上3本、全て観たならすっかり肝が冷えたと思う。まだ足りないなら、個別に相談に乗ります(費用別途請求)。
■配信情報
『サユリ』
DMMにて見放題独占配信、各社レンタル配信中
Blu-ray&DVD 発売中
『THE HAND 恐怖のお手洗い』
見放題・レンタル配信中
『ヒロシの心霊キャンプ』
見放題・レンタル配信中




















