宇野維正の映画興行分析
『近畿地方のある場所について』好スタート 国内ホラー映画ブーム、本格化の兆し

8月第2週の動員ランキングは、前週までのトップ3作品『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』と劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』と『国宝』に、初登場作品の『ジュラシック・ワールド/復活の大地』と『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』の2作品がそれぞれ2位、4位に食い込む展開に。各作品の数字も高水準で、全国のシネコンはお盆休みらしい賑わいをみせた。
初登場2位となった『ジュラシック・ワールド/復活の大地』のオープニング3日間の動員は71万5000人、興収は11億3300万円。この成績は2022年7月に公開された前作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の同期間の興収比で84%の数字。『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の最終興収は63億2200万円だったので、今作も興収50億円超えは十分に見込めるだろう。
上位5作品の強さが際立っているものの、6位に初登場した『近畿地方のある場所について』も好調だ。『近畿地方のある場所について』のオープニング4日間の動員は31万8200人、興収は4億4000万円。この成績は今年6月13日に公開、8月11日までの60日間で興収18億4500万円を記録している『ドールハウス』の初動を大きく上回る数字。作品内容については賛否が分かれているものの、ホラー映画ファンを超えて広く話題を集めることに成功していて、興収20億円超えも射程圏内となっている。
7月25日に公開、公開週は初登場4位、先週末は8位までランクを落とした『事故物件ゾク 恐い間取り』の8月11日までの17日間の動員は56万9000人、興収7億6100万円。2週目以降の成績は少々伸び悩んでいるものの、こうして複数の国内ホラー映画がトップ10にランクインするのが常態化しているのは2025年の新しい傾向だ。実写日本映画という括りでいうなら、恋愛メインのティーンムービーに代わって、テレビドラマの映画化作品と並ぶ2大人気ジャンルへと成長しつつある。
90年代の後わりから00年代前半にかけてのJホラーブームの火付け役となった『リング』(1998年公開)の最終興収は約20億円。当時と比べるとヒットの基準となる興収が底上げされているとはいえ、数字上では同水準のヒットを連発するようなってきた現在の国内ホラー映画。一時期はメジャー系配給会社の作品が減少していたが、近年になってワーナーのローカルプロダクション作品が参入、そして最大手の東宝も再参入した。以前のJホラーブームの失速の理由の一つはキャラクターに頼った続編の粗製濫造にあったが、現在は映画以外のフォーマットのホラー作品の隆盛のおかげで、当面ネタ切れの心配もないだろう。そう考えると、まだまだこの機運は続きそうだ。
■公開情報
『近畿地方のある場所について』
全国公開中
出演:菅野美穂、赤楚衛二
監督:白石晃士
脚本:大石哲也、白石晃士
脚本協力:背筋
原作:『近畿地方のある場所について』(著者・背筋/KADOKAWA)
音楽:ゲイリー芦屋、重盛康平
主題歌:椎名林檎「白日のもと」(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会
公式サイト:http://kinki-movie.jp/
公式X(旧Twitter):@kinki_movie
『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/























