『ちはやふる』競技かるたは実際どれだけ“キツイ”のか? プロの所作を実体験分析!

畳の部屋で正座をする。そのままお尻を浮かし、上体を45度の角度で固定する。この体勢がすでにキツい。相当な体幹の強さが必要だ。映画において、千早たちが各種プランク(体幹を鍛える静的トレーニング)をプルプルしながらこなすシーンがある。「かるたに筋トレいる?」と思いながら観ていたが、かるたに筋トレいる。必須だ。この体勢を90分×6~7回キープするには、超人的な体幹の強さが必要だ。

そして、札を凝視する。札はないので、あるていで畳の目を凝視する。『伊藤孝男の百人一首・競技かるた』(思文閣出版)によれば、元名人・川瀬健男氏は、試合中によく目の毛細血管が切れたと言う。それぐらいの眼力で、それほどの執念で、札を見る。筆者も、畳の目を穴が開くほどに見つめてみる。
体勢、眼力、気持ちを整えて、やっと素振り開始である。楠木氏と同じく、300回行う。本来なら1回1回札を飛ばすのだが、何度も言った通り札はないので、1回1回畳をこするようにする。それも、人間ワイパーと化して無機質に手を左右に振っても意味がない。楠木氏は、「この一発で相手の息の根を止めてやる」と思って札を取っていたそうだ。おそらく名人やクイーンに輝くような人たちは、札だけでは物足りず、相手の命まで刈り取るつもりで戦っていたのだろう。筆者も、一発一発相手を殺すつもりで振らなければ、失礼に当たる。筆者は武道家なので、全力の掌底打ちだと思って振る。

とりあえず、100回目ぐらいで激しく後悔した。一発一発魂を込めた上での高速素振りにより、僧帽筋が焼け付くようである。たった100回で、疲労物質の乳酸がだくだく分泌されている。ケバ立った畳を毎度高速でこするため、指が痛い。血が出そうだ。おまけに45度体勢をキープしているため、腰が激しく痛い。最近おとなしくしていた筆者の腰のヘルニアが、また爆発しそうな気配がする。1回1回腰をツイストするため、そのつど、腰の崩壊を感じる。だが、ここでやめるわけにはいかない。
300回やり終え、そのままうつ伏せに倒れ込んだ。千早のように、そのまま眠ってしまいたかった。肩から腕にかけて、小刻みに痙攣している。指先は内出血している。腰は死んだ。ヘルニアが、新たなフェーズに到達した気がする。怖すぎる。当初は、利き腕をケガした白野風希(齋藤潤)の気分でついでに左腕もやろうかと思っていたが、ごめんなさい、勘弁してください。

翌日の今、腰にコルセットを巻き、右肩には湿布を貼り、痛み止めのロキソニンを飲んでこの原稿を書いている。右腕の筋肉痛および内出血した指先の痛さにより、タイプミスを乱発している。なんかもう締め切りに間に合わない気もしてきたが、それよりも接骨院に行かせてください。
よく考えたら、ヤックモックこと八雲力(坂元愛登)ですらA級選手である。武道歴30年の筆者がボロボロになるような練習を、あのなよなよしたヤックモックは涼しい顔でこなしているのだ。悔しいが、これが現実だ。
9月10日の放送回において、いよいよ梅園VS瑞沢の運命の決戦が行われる。彼ら彼女らは、みな厳しい練習をこなしてきたアスリートたちだ。観るほうも、覚悟を持って見守らねばならない(できれば正座で)。
2016年から2018年にかけて公開された映画『ちはやふる』シリーズの10年後の世界を舞台にした作品。廃部の危機にある梅園高校・競技かるた部の藍沢めぐるが、顧問として赴任してきた大江奏と出会い、成長していく。
■放送情報
『ちはやふる-めぐり-』
日本テレビ系にて毎週水曜22:00〜放送
出演:當真あみ、原菜乃華、齋藤潤、藤原大祐、山時聡真、大西利空、嵐莉菜、坂元愛登、高村佳偉人、橘優輝、石川雷蔵、瀬戸琴楓、髙橋佑大朗、藤枝喜輝、大友一生、漆山拓実、上白石萌音、内田有紀、要潤、榎本司、富田靖子、高橋努、波岡一喜、髙嶋政宏
ショーランナー:小泉徳宏
監督:藤田直哉、本田大介、松本千晶、吉田和弘
脚本:モノガタリラボ(小坂志宝、本田大介、松本千晶)、金子鈴幸
プロデューサー:榊原真由子、巣立恭平、中村薫、平田光一
企画・プロデューサー:北島直明
チーフプロデューサー:松本京子
音楽:横山克
主題歌:Perfume「巡ループ」(UNIVERSAL MUSIC LLC)
制作協力:ROBOT、ウインズモーメント
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/chihayafuru-meguri/
公式X(旧Twitter):https://x.com/chihaya_koshiki























