『ばけばけ』岡部たかしも仲間入り? トータス松本、北村一輝ら朝ドラ史に残るダメ親父

「(この状況を)もう何度も見たというか、なんというか……」
トキ(髙石あかり)の呆れ声が、腹の底から漏れ出た。先週放送された連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)第21週で、司之介(岡部たかし)が、やらかしたのだ。
司之介がウサギの商売に失敗して、松野家が莫大な借金を抱えてから幾年月。トキがヘブン(トミー・バストウ)と結婚してから暮らしは豊かになり、借金もめでたく完済したが、一家が松江を離れて熊本に引っ越したあと、暇を持て余した司之介の「ダメ親父」の血が再び騒ぎ出した。

長屋で暮らしたあの頃の、尻に火がついてヒリヒリとした日々が懐かしいと、ダメさ全開の思考で相場に手を出した司之介。一度は運良く儲けを出すが、二度目の投資で失敗してしまった。元本割れこそ免れたものの、久々に「この人が動くとろくなことにならない」でおなじみ、司之介の面目躍如と相成った。
朝ドラにはこれまでも、数々の「ヒロインのダメ親父」が登場している。その特性は、大きく括って「夢追い系(別名「働かない系」)」「酒呑み系」「出奔系」の3つに分類されると筆者は考える。
司之介は、酒は嗜む程度、長年牛乳屋で働いてはいたものの、うまい話にすぐ乗っかってしまう癖からして性根は「夢追い系」のダメ親父だ。物語序盤でウサギの商売に失敗したあと出奔もしている。
直近の過去作では、『ブギウギ』(2023年度後期)の梅吉(柳葉敏郎)が「夢追い系」「酒呑み系」のダメ親父にあたるが、家族への愛情は深く人情に厚い、まだマイルド寄りのダメ親父といえるのかもしれない。
ほかに「夢追い系」ダメ親父といえば、借金と「事業を起こしては失敗」を何度も繰り返す『まれ』(2015年度前期)の徹(大泉洋)がなかなかに鮮烈だった。3度も失踪を重ねた「出奔系」でもある。
タクシー運転手でありながら仕事をサボって車内で昼寝しているか、三線を弾いている姿ばかりが記憶に残る『ちゅらさん』(2001年度前期)の恵文(堺正章)も働かない父の代表格。だが、彼のゆるぎない家族への愛情がふんわりと「ダメさ」を包み込んでいた。
「出奔系」で強く印象に残るのは、『ふたりっ子』(1996年度後期)の光一(段田安則)。彼は豆腐屋の店主として毎朝3時に起きて働いていたが、ある日突然蒸発してしまう。「通天閣の歌姫」オーロラ輝子(河合美智子)に惚れ込んで、彼女の付き人として全国をドサ回りしていたのだ。段田安則が舞台の仕事で長期間撮影に穴をあけることから、それを逆手にとった大石静の作劇が見事だった。真面目で勤勉な人が、実は人知れず心の内に葛藤を抱えていて、ある日ぷつんと糸が切れたように飛んでしまうことがあるというリアリティが胸に迫った。
段田は『ふたりっ子』に続いて、同じく大石静脚本の『オードリー』(2000年後期)でもヒロインの父・春夫を演じ、彼もまた「出奔する父」だった。映画に恋した「夢追い系」でもあり、離れと母屋とはいえ、妻と昔の恋人が同じ敷地内で暮らすことに甘んじたり、娘の美月(岡本綾)に「2人の母」がいる状態を受け入れる様は狂気にすら思える。英語混じりのつかみどころのない口調で、すべてをするりとかわし続ける珍種のダメ親父だった。
この4月からNHK BSの7時15分からの「アンコール枠」で『ひまわり』(1996年度前期)の再放送が始まる。ヒロイン・のぞみ(松嶋菜々子)の父・徹(寺泉憲)は、物語の始まりからすでに出奔している。妻の親友であり、また自分の親友の婚約者であった女性と関係を持ち、子どもまで作り、自分は逃げて彷徨っていた。しかも不貞の末に生まれた子を妻に育てさせるという体たらくで、「出奔系」の中では抜きん出たダメ親父といえる。






















