『あんぱん』が描く「手のひらを太陽に」誕生秘話 “嵩”北村匠海が開花させた詩の才能

「手のひらを、すかしてみれば。真っ赤に流れる、僕の血潮」という誰もが聞いたことのあるフレーズ。「おや? この詩」と語りの林田理沙アナウンサーも受けてしまうほどに、国民的に知られる「手のひらを太陽に」は、やなせたかしが作詞、いずみたくが作曲を担当した童謡だ。NHK連続テレビ小説『あんぱん』第100話では、その誕生までのエピソードが描かれる。

それはのぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の住む長屋の近くに雷が落ち、停電。懐中電灯をつけたのぶは、明かりに手を透かし「血が流れゆう」と笑みを浮かべ、そこで嵩が冒頭の詩をつぶやくのだ。
第100話のポイントは大きく2つ。嵩は後に『アンパンマン』で世界的に有名になる、漫画家としての才能があることを我々は知っているが、そこには詩人としての素質も兼ね備えての躍進があったということ。「夜の底に黒い犬がいて小声で吠える。ボン・ボン・セ・シ・ボン」というのは嵩の漫画に出てくる犬の詩。八木(妻夫木聡)は「あいつの書く言葉は全部、俺には詩に聞こえるけどな」と、たくや(大森元貴)も「セリフも面白くて、でも悲しくて、でもどこかこう、あったかいんです」と称賛している。『あんぱん』の、特に序盤には脚本の中園ミホがやなせたかしの詩から引用したセリフが多くあり、第1週のタイトルにもなっている草吉(阿部サダヲ)の「たった一人で生まれてたった一人で死んでいく、人間ってそういうもんだ。人間なんて、おかしいな」は、その物悲しさをアウトプットした代表例だろう。

そしてもう一つのポイントは、嵩はのぶをはじめとした周りの人々に支えられながら漫画家を目指していくということ。たくやと永輔(藤堂日向)の情熱に圧倒され、漫画家の夢と目の前にある作詞家としての仕事とで逡巡し続ける嵩。すでに100話目を迎え、嵩の“たっすいがー”としての姿はいつものこととして見慣れてしまっているが、気が付けば嵩を応援してくれている仲間は大勢いる。健太郎(高橋文哉)や蘭子(河合優実)はもちろん、のぶは会社勤めに加え、八木の雑貨屋の手伝いまで、嵩の分も働き夫を支えていた。

「たまたま今描きゆう漫画が売れんだけやろ? それやったら何でもやってみればええのに。人を喜ばせるのって漫画だけに限らんと思う」とのぶに背中を押され、嵩は「手のひらを太陽に」で作詞家、さらには構成作家として活躍していくことになるが、漫画家としての逡巡はまだまだ続く。人を喜ばせること、その全てが意味のある遠回りだと信じて。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK





















